「ホープレスinドナウ川」 世界の川を下る旅

　人生いろいろ。紆余（うよ）曲折が普通だが、しなやかさを失わなければ何とかなるかも、と思わせてくれる一冊、『ホープレスinドナウ川　世界の川を下る旅　ヨーロッパ編』（佐藤ジョアナ玲子著、報知新聞社・東京）が発売された。

　第7回斎藤茂太賞を受賞した『ホームレス女子大生 川を下るin ミシシッピ川』の著者の第2弾エッセー。米国で仕事にまい進、一目ぼれした彼とのプライベートも充実していたのに、ビザの問題で職場をクビに。仕事も恋もいったん忘れて、ヨーロッパ10カ国を流れるドナウ川でカヤック旅に乗り出した。真冬のドイツから黒海に向かい、さらに東西文明が交わるトルコへ。米国内をこいだ前回とは異なる、国境をいくつも越えながらの旅は困難も多かった分、楽しさも気づきの数もケタ違い。著者が旅路の果てに見た景色は、どんなものだったのか。

　世界を揺らし続ける「国境」の意味、各国の歴史、人々の思いが胸に迫る。自分ではなかなかできない旅を追体験できる一冊だ。税込み1650円。