今年も全国的に梅雨入りし、ジメジメの季節が本格的にやってきました。街や電車の中の人混みが、その不快さを助長しているように感じます。週末はそんな都会から一線を画す、どこかのんびりとした涼しげなところへ足を延ばしたいものです。そこに温泉があれば、さらにゆったりできますね。
青森県・下北半島の海沿いに湧く下風呂(しもふろ)温泉は、本州の北の最果てにある温泉地。そのため、夏場は関東よりも涼しく湿度も控えめで、この季節でも快適に過ごすことができます。今回は、そんな下風呂温泉街に建つ「ホテルニュー下風呂」を紹介します。こちらは、津軽海峡の海の幸と、自家源泉の硫黄泉を堪能できるお宿です。



青森県風間浦村にある下風呂温泉は、津軽海峡を望むロケーションの温泉地。アクセスは青森市街からでも車で約2時間半かかり、決して近いとは言えない距離感です。その分、ドライブをしながら、だんだんと素朴な海沿いの景色へと変わる道中は、最果てまで来たんだなと思わせてくれ、旅情を高めてくれます。
漁港に沿って形成された温泉街には、10軒弱の旅館やホテル、民宿に、共同浴場、商店、食堂、カフェなどが軒を連ねます。今回ご紹介する「ホテルニュー下風呂」は、そのメインストリートの真ん中辺に建っています。地上5階建ての細長い外観は、都心の近代的なビルのよう。全25室の客室は、全てに下北産のヒバを使った、温もりを感じる空間です。海側の部屋は窓から漁港が見渡せ、ぼーっと眺めていると聞こえてくる波の音と鳥の声に癒やされるようでした。


お風呂は男女別の内湯のみ。5、6人サイズの湯船が一つのシンプルな浴室は、扉を開けた瞬間から甘く爽やかな硫黄泉の香りが漂い、温泉に来たんだな、とうれしくなります。
泉質は、含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(硫化水素型)。55度で湧く自家源泉をそのまま掛け流しながら浴槽内で湯を撹拌(かくはん)して温度ムラをなくし、適温に保っています。ミルキーブルーに濁るお湯は、深呼吸したくなるような硫黄泉の香り。硫黄と塩化物を多く含む泉質のため、お湯を舐(な)めてみると、ほどよい塩ダシ味に硫黄の風味が相まって「海鮮白湯スープ」のような味わいです。純白のきめ細かな湯の花が舞い、それが肌にサラサラとなじむクリーミーな感触が心地よく、湯上りはワントーン明るい滑らか肌を実感することができました。




食事は、新鮮な海峡の幸をふんだんに使ったメニューが魅力です。下北半島は、太平洋、津軽海峡、陸奥湾の三つの海に囲まれているため海産物の種類も豊富。こちらのお宿では季節にあわせた旬の食材を、これでもかと提供してくれます。
宿泊したのは昨年の7月中旬。この日の夕食は、アワビの陶板焼き、サケの朴葉みそ焼き、ヒラメ・ボタンエビ・サーモン・ホタテ・マグロのお造り、殻付きウニ、もずく酢、タコの頭のかす漬け、アンコウのとも和えなどが食卓に並びました。どの料理もそれぞれが主役級の存在感とおいしさ。地酒とともにいただけば、お酒がグイグイ進んでしまうラインアップに大満足でした。

最果ての雰囲気が涼しげな下風呂温泉。本州最北端の大間や、5月~10月のみ開山している霊場「恐山」など、周囲にはさまざまな涼を感じられるスポットもあり、周辺観光も楽しめば、心も体も爽快になれますよ。夏のジメジメに心が滅入ったら週末はどこか遠くへ足を延ばし、都会とは一線を画す非日常に癒やされたいものですね。
【下風呂温泉 ホテルニュー下風呂】
住所 青森県下北郡風間浦村下風呂下風呂67-2
電話番号 0175-36-2021
【泉質】
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉[硫化水素型](低張性 中性 高温泉)/泉温55.3度/pH:6.20/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆完全掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)