スピードスケートの高木美帆(日体大職)が、トップアスリート育成の支援を行っている上月財団(上月景正理事長)主催の「上月スポーツ賞」を受賞し、3月17日に表彰された。高木は3月5日終了の世界選手権女子1000メートルと1500メートルで3位に入った。表彰式は例年、秋に開催されるが、高木はシーズン直前で出席できないことが多く「自分の都合で欠席しているのに、今回は時期をずらして表彰式を行ってくれた。その心配りに、受賞と併せ本当にうれしい」と感謝した。
リーダーの責任を自覚
高木は、北京冬季五輪の1000メートルを制し2大会連続となる金メダルを獲得した後、今シーズンはナショナルチームを離れ、個別で活動している。オフはスポンサーへのあいさつ回りなどで多忙な上、28歳になって体力の回復に時間が掛かるようになった。「以前は心のリフレッシュがオフのテーマだったが、今は体の手入れがメイン」という。
今後の活動でも仲間を増やしたい希望がある。しかし、活動資金や生活の保証などを考えると「一緒にやろう、では済まないレベルの責任がわたしにはある」という。リーダーとしての責任を自覚するからこそ、大学生になった時から受けてきた上月財団の次世代支援の価値が分かるのだろう。「長い間、応援してくれている。ありがたい限りです」という言葉には実感がこもる。
助成金倍増で選手を支援
上月財団は、ゲーム機器の製造やソフト開発を手がけていたコナミの創業者、上月景正氏が私財を投じて1982年に設立した。当初は教育振興が主だったが、2001年にスイミングスクールで有名なピープル(現コナミスポーツ)を子会社化してから、スポーツ選手支援の比重が高まった。これまで約1400人の選手が支援を受け、国際大会で好成績を残した300人以上が上月スポーツ賞を受賞した。
2021年の東京五輪までは、各競技団体とも強化資金に恵まれたが、五輪後は厳しい状況が続いている。こうした中、自らコナミグループの社長を務める上月財団の東尾公彦専務理事は「資金はコナミグループの株式配当が充てられている。選手の助成金はこれまで年に60万円だったが、今後は倍の120万円にしたい」と話した。好不況や一時的な施策とは関係なく持続する上月財団の資金援助は、多くの芸術家を育んだ欧州のパトロンの精神に通じるものがある。