カルチャー

「地方に仕事がない」は誤解 地方で成功と自由を手に入れる指南書

坂元陽祐さん書影

 よく、「地方には仕事がない」といわれるが、この本の著者は「それはウソだ」と言う。『まったく新しい「地方で起業して成功と自由を手に入れる」方法』(春陽堂書店)が刊行された。岐阜県出身の坂元陽祐氏が、高知県で起業し成功を収めた体験談を記した本。

 坂元氏は、橋をはじめとする人口建造物の点検、調査、補修、補強設計などを行うインフラマネジメント(高知市)の代表取締役社長(CEO)。高知で1人で起業した会社は現在社員23人、資本金は50万円から10倍の500万円、年商は2億円にまで成長した。「地方は消失しない」「新しいことは地方から始まる」と著者。

 坂元氏は、地方が UターンやIターンによる転職・就職を常に募集しているのは、人材不足であり、そこには仕事の需要があると説明。移住して起業するにはよほど突出した個性や才能がなければ成功できないと思われがちだが、こちらも否定する。都市部ではやっているものを地方で時間差で試すだけで成功につながる可能性があり、「自分の食いぶちくらい稼げればいい」と気軽に商売を始めることも可能。地方は正にブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)だと説く。

 同書では、さまざまな教訓を「レッスン」として提示。「何となくのUターンは危険(そこが自分にとって有利な土地なのかを吟味すること)」「味方をつける必要がある(家族、職場、学生時代からの友人を味方に。結婚している人はまず配偶者を説得し味方につける努力を)」「自分の仕事の延長線上にある仕事をイメージすべし(自分の思いつきを羅列、同じ会社からの転職、独立者をリサーチ、勤め先と取引先の事業を細かくリストアップの3段階で進める)」などだ。

 50万円という少ない資金から事業を始めた坂元氏が、そこからどう社員や仕事を増やしてきたかも余すことなく記している。場所や規模を問わず、起業を考えているすべての人におすすめの1冊。税込み1760円。