フランスの印象派の画家、クロード・モネというと、「睡蓮(すいれん)」や「ルーアン大聖堂」、「印象・日の出」など、淡い色合いの絵画を思い浮かべるが、モネの世界が金工芸になるとまた異なる独特の優美さを持つ。アメリカのアーティスト、ダニエル・ブラッシュの作品を日本で初めて紹介する美術展「ダニエル・ブラッシュ展 ― モネをめぐる金工芸」が、2024年1月19日~4月15日まで、東京 六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催される。入場無料、予約不要。
素材の詩人といわれるブラッシュは金属加工職人であり、宝飾職人、哲学者、エンジニア、画家、そして彫刻家でもある。展覧会の第1章では、ジュエリーから芸術作品、オブジェまで、幅広い作品の中に見られる、伝統的な芸術のカテゴリーを超えた多様な素材や表現方法を紹介。第2章では、ブラッシュの連作「モネについて考える」にハイライトを当て、素材の特性を生かして卓越した極めて優美なオブジェを生み出す、彼の類いまれな能力を探る。
アーティストとしてフランス印象派の画家が使う色彩、とりわけモネの淡いピンク、セルリアンブルー、カドミウムイエローといった光を取り入れた色相につねに興味をそそられていたブラッシュ。アルル、ルーアン、ジベルニーなどを訪れ、パリで数カ月を過ごしたブラッシュだが、油絵具を嫌っており、最終的に宝石の原石の中の光、スチールやアルミニウムから独特の手法で引き出すことのできた光にたどり着く。芸術とジュエリーの関係性について熟考する彼の作品を見ながら、絵画とは異なる世界に現れるモネ、そしてジュエリーのまた違った側面を知ることができそうだ。