美術館に行く時は大抵、中に展示されているものの美しさを求めて足を運ぶが、美術館の建物自体が芸術的、というところも少なくない。広島県大竹市にある下瀬美術館は、ユネスコ本部に創設された建築賞で、12月2日に「世界で最も美しい美術館」の最優秀賞を受賞した。
この建築賞は世界中の空港、商業施設、ホテル、スポーツ施設など8つのカテゴリーを対象に著名な建築家や哲学者らの審査で選出されるもの。各部門でノミネートされた中から3施設に対して、最優秀のベルサイユ賞、内装特別賞、外装特別賞の3つが授与される。下瀬美術館はそのうち「世界で最も美しい美術館」7施設にノミネートされていた。
下瀬美術館は2023年3月開館。世界で活躍する日本人建築家・坂茂氏が設計した。コンセプトは「アートの中でアートを観る。」。施設を象徴する水盤に並ぶカラフルなキューブ型の「可動展示室」は、瀬戸内の島々から着想し、水の浮力によって動かし配置パターンの変更が可能な世界でも類のない展示空間だ。展示作品の鑑賞とともに、季節の草花が風にそよぐ「エミール・ガレの庭」や、瀬戸内の多島美を望める展望エリア「望洋テラス」の散策も楽しめる。