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ミャンマー軍政と命がけで闘うパンクロッカーたち「The Rebel Riot」 戒厳令下での困難を乗り越えて制作されたCDが発売中

軍政に抗議の声をあげるThe Rebel Riot (撮影はThihaによる)。
軍政に抗議の声をあげるThe Rebel Riot (撮影はThihaによる)。

 パンクロックといえば反抗、抵抗、反権力といったイメージを持つのではなかろうか。そう、その精神を文字通り命がけで発信しているパンクロッカーたちがいる。

 2021年2月1日に国軍によるクーデターが起きて、ノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチー氏が拘束されるなど民主化勢力が厳しく弾圧されているミャンマーで、音楽を通じて軍政に抵抗し続けている「The Rebel Riot」だ。

 国軍が自らの権力を維持・拡大させるために「クーデター」を起こしたのならば、彼ら彼女らは人々の生命・権利と生活を守るための「革命」の必要性を訴えている。

 The Rebel Riotは2007年にミャンマーで結成されたパンクバンド。国内のみならずヨーロッパ、インドネシア、タイなどへのツアーも積極的に行ってきた。

路上で軍政に抗議するThe Rebel Riot ( Thiha撮影)。
路上で軍政に抗議するThe Rebel Riot ( Thiha撮影)。

 当局の監視の目をかいくぐりながらレコーディングし、その政治的な内容のジャケットや歌詞のために国内の多くの印刷所から拒否されながらも、内外の多くの友人たちからの支援を受け、戒厳令下の2021年夏にアルバム『One Day』をリリースした。

 「Genocide」つまり「虐殺」という作品、他にも「Food not Bombs」(爆弾でなく食料を)、「Destruction Of Humanity」(人間性の破壊)、「Abolish Military Slave Education」(軍の奴隷化教育を止めさせよ)といった曲が並ぶ力作だ。

 ミャンマーパンクの中心人物でもあるチョー・チョーは、咆哮(ほうこう)に近いハイテンションのボーカルで、国内の深刻な状況を鋭く告発する。

 2021年12月に発売された日本盤CDにはボーナストラックが2曲収録されている。そのうちの1曲は「Bella Ciao」(さらば恋人よ)で、これは1943-1945年のイタリアにおける反ファシスト党運動で歌われた曲のカバーである。

The Rebel RiotのCD『ONE DAY』。
The Rebel RiotのCD『ONE DAY』。

 このThe Rebel Riot の通算4枚目となるCD『One Day』。仲間たちがミャンマー語の歌詞を訳し、曲の解説もつけた。価格は税込み1,760円。Tシャツ付きのCDは税込み4,730円。Tシャツ1枚の売り上げのうち1,200円はThe Rebel Riotと他のパンクロッカーたちによる「フード・ノット・ボムズ」活動に寄付される。

 このプロジェクトは、●毎週月曜日に街頭の人々に食べ物を寄付●ヤンゴンのラインタヤーとマンダレーのシェピタのスラム街にあるHIVチャイルドセンターへの訪問。3カ月に1回、自家製料理を提供し、子どもたちと一緒に歌ったりする●自然災害や火災が発生した時には、あらゆる犠牲者を支援し、できる限り食料を寄付する――という内容だ。

 大阪にあるパンクバンド専門のインディーズレーベル「BRONZE FIST RECORDS」の高崎英樹(たかさき・ひでき)代表は彼らの活動を支援し続けている。

 2000年代半ばごろ、高崎さんはSNSで、東南アジアのパンク・ハードコア・バンドから日本や欧米のバンドにはない刺激を受けるようになる。そして、その頃にThe Rebel Riotのチョー・チョーと知り合い、2011年に現地に行って交流を深めていく。2020年2月には、当時高崎さんが住んでいたタイ北部のチェンマイに彼らが来て、9年ぶりに再会した。

 高崎さんは語る。「クーデター後、彼らのためにできることは何だろうかと考えた結果、チョー・チョーが中心となって2004年から行っている“フード・ノット・ボムズ”へのドネーションとしてステッカーやTシャツ、ピンバッジを作って販売することにしました。現在までに40万円以上を送金することができました」。

 「そして、2021年夏にThe Rebel Riotが発表した『One Day』の内容が素晴らしかったのでボーナストラック2曲入りの日本盤を同年末にリリースしました」。

 「社会に与える影響度などを考えると1977年にリリースされたセックス・ピストルズの唯一のオリジナル・アルバム『Never Mind the Bollocks』(邦題「勝手にしやがれ!!」)に匹敵する内容のある作品であると自負しています」と高崎さんは言う。

 さらに、高崎さんは2022年10月、「フード・ノット・ボムズ」活動への寄付を目的としたオムニバスCD『Women at the Front』をリリースした。

オムニバスCD『Women At The Front』。
オムニバスCD『Women At The Front』。

 主旨に賛同してくれた、女性ボーカルをフューチャーしたーEIFFITS(東京)、ANANAS(京都)、TERROR CHORD(大阪)、OOPS(大阪)、The Rebel Riot(ミャンマー)、LIPS(ジャカルタ)、SICKBOY(インドネシア・バンダアチェ)、ASIA NEARER(ネパール)、CAPUKE(フィリピン)、RADIGALS(シンガポール)が参加している。

 CDは税込み2,200円。一枚につき400円が「フード・ノット・ボムズ」に送られる。さらにピンバッジ付きのCDも販売中(同3,740円)で、CDとピンバッジの1セットは1,000円が「フード・ノット・ボムズ」に寄付される。 これらのCDは、「BRONZE FIST RECORDS」のホームページBRONZE FIST RECORDSから購入できる。