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高齢者や介護現場に寄り添う「思い出放送局」 思い出写真まとめて動画に、「お墓参り代行中継」も

 番組映像制作・音楽出版・WEBサイト制作運営を手掛けるラスト(東京)は、外出が難しい高齢者や認知症の人たち、介護される家族に向けて、思い出や家族の風景を映像で届ける新サービス「思い出放送局」をスタートした。懐かしい街並みや家族との思い出、さらに「お墓参りの代行中継」と、利用者一人一人の心に寄り添う映像体験を提供していくという。

 日本は世界でも有数の高齢化社会となり、家族や介護現場では孤独感や疎外感を抱える高齢者が増加。社会的なつながりの希薄化が深刻な問題となっている。「思い出放送局」の発案者で、ラスト代表の森田博氏は、自身の親の介護経験を通じて「これまで育ててくれた恩返しに、少しでも喜んでもらいたい」「昔話をして思い出してもらいたい」という切実な思いを抱くようになったという。また、日々の介護の中で、1時間前のことは覚えてなくても、若かりし頃の長期記憶である何気ない日常や懐かしい風景、家族の思い出が大きな心の支えとなることを実感したという。

 自身の「母ちゃんのためだけ」の番組制作から始まったこの取り組みは、やがて“心の栄養”として多くの高齢者やその家族に届けたいという願いへと発展。テレビ番組やニュース映像制作で培った知識とノウハウを生かし、単なる記録映像ではなく、見る人の心に寄り添い、会話や思い出話が自然と生まれるような映像体験を目指している。

 また、近年は「お墓参りに行きたくても行けない」「遠方に住んでいてなかなか帰省できない」といった声も多く聞かれるようになったという。特にお盆や年末年始などの時期は、交通機関の混雑や費用の高騰が課題となり、家族の絆を感じる機会が減少している。こうした現状を受け、「思い出放送局」では、お墓参りの代行とリアルタイム中継にも対応し、利用者がその場にいるかのような体験を提供していく。

 「思い出写真をもう一度プラン」は、1枚しか残っていない写真を預かり、古い写真も可能な限り鮮明にして動画にまとめて納品する。料金は、100枚まで5万円、100枚以上は10枚ごとに5500円追加。サンプル動画も紹介している。

 「お墓参りプラン」は、現地からスマートフォンやパソコンにリアルタイムで映像を中継する。合掌タイムをしっかり設け、菩提(ぼだい)寺がある場合は住職による読経にも対応。お布施の代行も可能な限り行い、利用者の宗教的・精神的なニーズにも配慮する。8万8000円(お布施・交通宿泊費は別料金)。料金は全て税込み。