2026年から「林野火災注意報」と「林野火災警報」の運用が始まった。例年、冬場から春先にかけて多発する山火事の予防を目的とし、空気の乾燥や強風など火災発生にとって危険な気象状況になった際に市町村が発令する。山火事はひとたび出火すると急速に延焼し大惨事に至る危険性をはらむ。消防庁は「山火事の出火原因は人的要因が多く『防げる災害』。林野火災注意報・林野火災警報で、一人一人の防火意識が高まることを期待している」と話している。
▽大船渡火災がきっかけ
林野火災注意報と林野火災警報が導入されるきっかけとなったのは、25年2月に岩手県大船渡市で発生し、約60年ぶりの規模となった林野火災だ。焼損面積3370ヘクタールで、男性1人が死亡、建物被害は226棟に及び、産業等の被害額は100億円を超えた。消防庁と林野庁は「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」(検討会)を設置。そこでの議論を受け、市町村長が「林野火災注意報」や「林野火災警報」を発令する仕組みをつくることが決まり、26年1月から全国の自治体で火災予防条例に基づく運用が順次始まっている。
※火災予防条例の改正状況や林野火災注意報・警報の発令基準、火の使用に関する具体の禁止行為などは市町村により異なる場合があります。

消防法と各自治体の火災予防条例では、一定の条件に基づいて発令される「火災警報」が以前から存在する。しかし、検討会では「罰則を伴う火の取扱制限であり(火災警報の)発令に躊躇(ちゅうちょ)する消防本部の声がある」などとして、強い制限や罰則を伴わない注意喚起として発令できる林野火災注意報と、火災警報でも目的を山火事予防に絞った林野火災警報の創設が提言された。

林野火災注意報は、降水量や乾燥など条件で林野火災が発生・延焼しやすい状況になったときに発令され、その区域の人々に屋外での火の使用等の禁止の努力義務が課される。林野火災警報は、林野火災注意報の条件に加えて強風注意報が発表され、発生した林野火災が大規模化しやすい危険な状況になったときに発令される。発令地域では屋外での火の使用等が禁止され、違反すると30万円以下の罰金または拘留が科される場合もある。具体的な気象条件の指標は、市町村が地域ごとに設定できるためきめ細かい予防体制が期待される。

▽山火事は防げる災害
山火事の出火原因は人的要因によるものが多くを占めている。消防庁の調査によると、20~24年の5年間の平均では、年平均約1170件の発生のうち、枯れた草や葉を焼却するための「たき火」や、害虫駆除などを目的として草や木などを広く焼却する「火入れ」が出火原因の半数以上で、放火(疑いを含む)、たばこ、マッチ・ライターが続く。また、山火事は年間を通じて発生しているが、6割超が2~5月に集中。この時期は、たき火や火入れがよく行われる上に、少雨、乾燥、強風という気象条件が重なる。たき火や火入れ等を行うときは、危険な日を避け、決められた手続きに沿って行うことが重要だ。ちなみに、上記5年間の年間の平均焼損面積は752ヘクタールで、平均損害額は約3.2億円に達する。

また、ハイキングや山菜採りに加え、キャンプや登山といったアウトドアレジャーも人気の広がりを見せている。季節によっては火をおこして暖をとったり、バーベキューをしたりするなど、自然の中で火を扱う機会が増えている。乾燥・強風の日には火を使わない、たばこの投げ捨てや火遊びは絶対にしないといった基本的なことはもちろん、火を使う周囲に燃えやすいものがないかを確認し、必ず消火用の水を準備するといった、万が一に備えた体制をとることが大切だ。

山火事は、一人一人が防火意識を高めることで防ぐことができる。山がちな地域に住んでいる人だけでなく、週末を山で過ごすなど少しでも自然と触れる機会のある全ての人が注意を払わないといけない問題だ。山火事で森林が消失すると元の姿に戻るのに長い時間が必要なのはもちろん、地表の浸食や土砂崩壊を防ぐ機能などが失われ土砂崩れなど二次災害につながる可能性もある。山火事予防などを担当する消防庁特殊災害室は「林野火災注意報や警報の発令状況を意識し、屋外での火の使用は控えるなど、林野火災の防止に協力してほしい」と話している。










