おでかけ

1本の木に会いに行く(40)山形 さくら回廊<山形県>

きびしい冬を耐え、待ちに待った春を謳歌しているのでしょう。東北地方、特に山形や福島の桜は伸び伸びと咲いているように感じます。どの桜も大地にどっしりと根を張り、大空に枝を伸ばし、力いっぱい花びらを開いているのです。山形の桜の名所、置賜(おきたま)地方の長井市周辺と赤湯を訪ねました。
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山形・置賜(おきたま)地方の「さくら回廊」を行く
山形県置賜地方とは山形県南部、最上川の水源・吾妻連峰の裾野に広がる米沢盆地を中心に、長井盆地を含めた最上流域の盆地、そして小国盆地からなります。そのなかで赤湯温泉から白鷹町荒砥駅までの山形鉄道フラワー長井線沿線約43Kmのルートは「置賜 さくら回廊」と呼ばれる桜の名所なのです。

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ここには日本のさくら名所100選の「烏帽子山千本桜」を起点に、国指定天然記念物「伊佐沢の久保桜」「草岡の大明神桜」県指定天然記念物「薬師桜」をはじめ、樹齢1200年あまりの古木や名木、巨木といった“古典桜”の名所が20か所も点在しているのです。昨春、この桜回廊を訪ねました。

長井市の「最上川堤防千本桜」へ
まずは最上川流域の長井市に向かいました。最上川はときには氾濫して大きな被害をもたらしてきましたが、流域は山形の穀倉地帯であり水運で栄えたそうです。ちなみに松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」という俳句の通り、日本三大急流のひとつに数えらえるそうです。

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その最上川の氾濫を防ぐための堤防約2kmに300本が植樹されたのが大正4年(1915年)。以来「千本桜」「土手の桜」として親しまれてきました。現在でも200本あまりが残され、樹齢100年を超える見事な桜並木となっております。目印は最上川河畔にある観光交流センター「道の駅 川のみなと長井」。

江戸時代には周辺から米沢藩の物資を舟に積み込んで最上川を下り、酒田から京都や大阪へ運ぶための積み出した川港でした。米や青苧、穀類などを運び出し、上方からは、塩や砂糖、海産物、古着などを運び入れる舟着場として活気にあふれたといいます。

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例年の見ごろは4月中旬から下旬ですが、ウェザーニュースによれば、この4月8日にはすでに開花しているとのことで14日には桜吹雪という予想が出ています。

今回の旅では山形新幹線赤湯駅でレンタカーを借りました。公共交通ですと山形鉄道フラワー長井線に乗り換えて長井駅下車。「道の駅 川のみなと長井」までは路線バスまたは徒歩20分ほどになります。

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そしてもうひとつ、最上川周辺の桜の名所といえば、フラワー長井線線の素朴な車両と沿線の桜の風景。個人的には終着駅の荒砥駅手前にある最上川橋梁(荒砥鉄橋)周辺の桜が印象的でした。

この橋梁・荒砥鉄橋は明治20年(1887年)に東海道線に架設されたものを、大正12年(1923年)に移設したものといい、日本土木学会選奨の「土木遺産」に選定されているそうです。

最上川堤防千本桜
住所:長井市東町2-50付近
HP: https://kankou-nagai.jp/event-view/?id=9352 (長井市観光協会)

樹齢1200年の古木 「伊佐沢の久保ザクラ」
今年は山形でも例年よりもずっと早い桜の開花で、散ってゆく時期も早くなっているようですね。とはいえ、散る間際の桜もまた風情があって味わい深いものです。

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次に向かったのは、長井市の伊佐沢地区にある久保ザクラ。樹齢1200年といわれる、国の天然記念物に指定されている日本有数のエドヒガンの古木で、坂上田村麻呂と地元の豪族の娘お玉との悲恋の伝説が残っています。例年の開花は4月の中下旬ですが、今年はすでに開花していて、15日には桜吹雪だそうです。

樹高13mの巨木で、江戸時代には枝の広がりが四反にも及んでいたことから、四反桜(よんたんざくら)とも呼ばれていました。ちなみに一反は11.12mあり、四反ともなると40mを超える長さです。どれほど大きかったことでしょう。

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現在では根元の部分が腐食し樹勢が衰えたため、主幹が南側と北側に大きく2つに分岐した姿になっています。専門家の助言をもとに樹勢回復が計画的に行われているといいます。

アクセスは車で観光交流センター「道の駅 川のみなと長井」から車で10分ほどの場所にあり、広い駐車場も整備されています。

伊佐沢の久保ザクラ
住所:長井市上伊佐沢2027
HP: https://kankou-nagai.jp/event-view/?id=9352 (長井市観光協会)

伊達政宗ゆかりの「草岡の大明神ザクラ」
「伊佐沢の久保ザクラ」と並ぶ古木が「草岡の大明神ザクラ」。こちらも国指定の天然記念物で樹齢1200年といいます。

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樹高14m、東西の枝張27mあり、個人宅の畑に植えられた桜として国内最大級の大きさといいます。伝説では、伊達政宗が鮎貝の初陣で敗北を喫した際に、この桜に身を隠し生き延びたと伝えられ、政宗は「桜子の 散り来る方を 頼み草 岡にて又も 花を咲かせん」と詠み、後に家臣の横山勘解油(かげゆ)を遣わせ、桜の保護にあたらせたという逸話も残っています。

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春の農作業の種まき時に桜が開花することから「種まき桜」とも呼ばれてきたそうで、筆者が訪ねた時は「伊佐沢の久保ザクラ」よりも開花が遅く、まだ五分咲きといった様子でした。とはいえ今年はすでに満開となり、14日に桜吹雪と予想されています。

草岡の大明神ザクラ
住所:山形県長井市草岡694
HP: https://kankou-nagai.jp/event-view/?id=9352 (長井市観光協会)

周囲は広々 桜の公園「釜の越桜」
続いては、長井市の北に隣接する白鷹町の「釜の越桜」。「釜の越」とは、古い地名だそうです。周辺は「釜の越農村公園」として整備され、たくさんの桜が咲いていました。花見客向けの売店も並んでいます。

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実は、この「釜の越桜」はすでに枯れています。2017年のことだそうで、2019年には県の天然記念物の指定も解除されていますが、古木はそのまま残されていました。かつては樹高約12.81m、目通り約5.54m、根周り約13.28mの見事なエドヒガンだったそうです。

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とはいえ上の写真の通り、後ろの旺盛な桜の花と重なって名木の雰囲気は残されていました。ちなみにこの古木の手前に3個の石がありますが、平安時代後期の後三年の役(ごさんねんのえき)の際、八幡太郎(はちまんたろう)といわれた陸奥国守・源義家が西にある三面峰に陣を張ったとき、この石で竈(かまど)を築き兵糧を炊いたという伝説が残され、地名の「釜」は、この竈に由来するともいいます。

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2020年には釜の越サクラの分身木が近くに移植されました。上の写真で若々しい木です。後ろに見える雪の朝日連峰と桜の樹木が特別に美しく、清々しい気持ちになりました。今年はすでに満開とのことです。

場所はフラワー長井線蚕桑駅から北西に1.5kmほどの場所で、徒歩でも20分程度でしょう。ちなみに毎年この時期に釜の越農村公園をメイン会場に「しらたか古典桜の里さくらまつり」が開催されます。

釜の越桜農村公園
住所:山形県西置賜郡白鷹町高玉3524-1
HP: https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

坂上田村麻呂の手植えと伝わる「薬師ザクラ」
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釜の越桜から徒歩5分ほどの薬師堂にある「薬師ザクラ」。こちらも樹齢約1200年といい、山形県の天然記念物に指定されています。樹高は約10mほどですが、幹回りが約8mもあり、大きくねじれ、巨大な幹は迫力十分です。

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坂上田村麻呂が奥州征伐の時、手植えしたものと伝えられていて、薬師堂の周囲には、馬頭観音や庚申塚、そして湯殿山と書かれた石碑が並び、古くから人びとに信仰されてきたことを物語っています。

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例年の見頃は4月中旬~4月下旬といいますが、今年は4月15日には桜吹雪とみられています。

薬師サクラ
住所:山形県西置賜郡白鷹町大字高玉3663
HP:https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

小高い丘の上の「十二の桜」
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小高い丘の上に、通称「種まき桜」とも呼ばれる樹齢400年ほどの老木の古株が残り、現在はその3代目が大木となっています。「十二」とは「十二薬師堂」を意味しているといい、薬師如来の神様が十二神いらして「十二神将と薬師如来のお堂」があった場所だそうです。

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この時はまだ3分咲きといったところ。例年はやはり4月中旬から下旬が見ごろといいますが、今年の満開は薬師ザクラと同じころではないでしょうか。

十二の桜
住所:山形県白鷹町山口4006-2
HP:https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

ひっそりと健気に咲き誇る「赤坂の薬師サクラ」
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白鷹町の街なかを走り、車を止めて少し山の方に入る小道を登ってゆくと、こんもりとした高台の上に見上げるように咲いています。それほど大きくはないのですが、樹齢は970年、樹高約9m、幹囲約6.1mといいます。

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エドヒガンで別名“種まき桜”ともいい、たぶん花が咲くころに田畑では種まきが行われたことでしょう。この木の近く赤坂薬師堂があったことから「赤坂の薬師サクラ」と名付けられたそうです。

昭和の初めには火災に遭って半分焼けてしまったそうですが、いまも太陽に手を伸ばすように必死に咲いている姿が健気でした。

場所はフラワー長井線四季の郷駅から徒歩で15分かからない距離でしょう。

赤坂の薬師サクラ
住所:山形県白鷹町箕和田1071
HP:https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

白鷹町を見守る「子守堂の桜」
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赤坂の薬師サクラからほど近い丘の上にもう1本「子守堂の桜」があります。手前の駐車場に車を止めて坂を少し登っていきます。途中、地元の方が多分自宅でとれた野菜やちょっとした土産品を売っていました。幹回りは7m、根回りは10mを超える立派なエドヒガンです。

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「子守堂の桜」というのは、近くに地蔵菩薩が祀られている祠があるのです。昔、ここにあった鮎貝城の城主本庄氏の子どもが丈夫に育たず早世してしまったある日、ひとりの童子が訪ね、その童子が城主の子どもの世話をしたところ、すくすくと育ったそうです。童子をほめようと探すと姿は消え、丘の上に草履だけが残されていたとか。そこで童子は地蔵菩薩の化身だったのではないかと、その場所に地蔵堂を建てて祀ったという伝説が残されています。

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白鷹の街を見守るように「子守堂の桜」が大きく花開いていました。こちらもフラワー長井線四季の郷駅から徒歩10分ほどの場所にあります。

子守堂の桜
山形県白鷹町鮎貝3347
HP:https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

上杉藩主が立ち寄ったと伝わる「殿入桜」
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これまでの桜は最上川の西側にありましたが、唯一川の対岸、東側にあるのが殿入桜(どのいりざくら)。山形県指定の天然記念物で樹齢680年のエドヒガンザクラ。文政12年(1829年)米沢藩11代の藩主だった上杉斉定が立ち寄ったことから「殿入桜」と呼ばれるようになったといいます。

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幹回り6.6m、根回り8.71mといい、一時は樹勢も衰えたそうですが、今では所有者の手入れで回復してきたといい、枝葉を大空に向けて広げるような元気ある桜です。

昭和の初めころには桜の季節に茶屋が出て、近郷近在から大勢の人びとが花見にきたと伝えられているそうです。そのせいか周囲が公園のようになっています。

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一角には可憐なカタクリの花々も咲いていました。最近ではなかなかお目にかかれない花です。余談ですが、このカタクリ、「春の妖精」(スプリング・エフェメラル)と呼ばれ、もともとの意味は「はかない命」。1年のうち地上で過ごすのは春先の2カ月足らずで、葉で光合成をして栄養分を土中の茎に蓄えて、翌年の春まで休眠状態で過ごすのだそうです。

殿入桜
住所:山形県白鷹町浅立4396
HP:https://kanko-shirataka.jp (白鷹町観光協会)

日本のさくら名所100選「烏帽子山公園」
最後に訪ねたのが南陽市赤湯温泉にある烏帽子山公園。町の中心部に位置する、こんもりとした山が烏帽子山公園で、由緒ある「烏帽子山八幡宮」に隣接しています。

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4万坪もの広大な公園にはソメイヨシノやシダレザクラ、エドヒガンなど約1000本の桜が植えられていることから「烏帽子山千本桜」とも呼ばれ、日本最大級のエドヒガンの群生地。東北地方きっての桜の名所としても知られています。

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今年2023年の桜ですが、じつはすでに開花していて、早くも15日には桜吹雪となるそうです。とはいえ、2023年4月30日(日)まで開かれる「赤湯温泉桜まつり」は、期間中にさまざまなイベントが行われ、5月5日(金・祝)までは18時から22時まで桜のライトアップもされているとのことです。

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ちなみに赤湯温泉は山形県南陽市にある温泉街で、今年2023年で開湯930年といいますから歴史ある温泉街です。町の中には14軒の温泉旅館と3つの公衆浴場が点在しているので桜を愛でながら温泉で憩うのもおすすめです。

烏帽子山公園
住所:山形県南陽市赤湯1415
電話:0238-40-2002(南陽市観光協会)
HP:https://nanyoshi-kanko.jp (南陽市観光協会)

[All Photos by Masato Abe]


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