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育成8位でもプロの荒海へ 東農大の左腕宮崎、ソフトバンク入団

東農大の象徴、大根を手に持つ宮崎投手(中央)。左は父親の正浩さん、右は母親の奈津江さん。
東農大の象徴、大根を手に持つ宮崎投手(中央)。左は父親の正浩さん、右は母親の奈津江さん。

 プロ野球、パ・リーグのソフトバンクは12月5日、今年のドラフト会議で指名した育成を含む20選手の新入団を発表した。育成に力を入れているソフトバンクは、今年14人を指名。その中に8位で指名された東都大学リーグ2部、東京農大の宮崎颯(みやざき・はやと)投手がいる。通常のドラフト指名(支配下登録)以上に、育成には厳しい競争が待っているが、野球選手の誰にとっても、プロの舞台でプレーすることは夢。180センチ、88キロと体格に恵まれた宮崎は、左腕からの140キロ台後半のストレートが武器だ。1軍のマウンドに立つ自分の姿を脳裏に描き、プロという荒海に乗り出す。

 育成選手は、1軍の公式戦に出場できる支配下登録(上限70人)を目指し、2軍戦や独立リーグ、アマチュアチームとの試合で技量を磨く。年俸も契約金も、通常のドラフト指名に比べれば極めて低い。しかし、ソフトバンクはエース千賀滉大、守りの要、甲斐拓也捕手が育成出身と、有望な若手の発掘と育成には実績がある。さらに来年から、新たに4軍を設けて3、4軍で合わせて年間200試合以上をこなす予定だ。育成でも実戦の機会は多い。

 宮崎は埼玉栄高、大学1、2年の時はけがに悩まされた。大学リーグ通算21試合に登板、2勝3敗と数字は残せなかったが、体力のある大型左腕は何といっても魅力。宮崎は「プロに進みたかった。正直、不安もあったが、どんな形(育成指名)でもうれしい。まずは支配下登録を目指し、早く1軍で活躍できる選手になりたい。目標は和田毅投手」と、ソフトバンクのベテラン左腕の名前を挙げ夢を膨らませた。担当の松本輝スカウトも「左で140キロ台後半のストレートは魅力。これから変化球を磨いていけば十分、戦力になる。2、3年で頭角を現してほしい」と期待した。

 父親の正浩さんは「野球を始めたころからプロが目標だった。多くの人に支えられ、ようやくスタートラインに立てた」と夢を追う息子に目を細め、母親の奈津江さんも「おいしいものをたくさん食べて、けがなくやってほしい」と気づかいをのぞかせた。球団と家族との交渉の席には、野球部の北口正光監督をはじめ、大澤貫寿理事長、江口文陽学長も立ち会うなど、大学側も温かく送り出そうとしている。

 東農大はかつて箱根駅伝で優勝争いをしたり、大相撲の時津風元理事長(元大関豊山))やプロ野球で強打者として活躍した故・片平晋作さん(南海など)を輩出したり、スポーツに強い印象がある。ただ最近は、食や健康への関心の高まりで女子学生が増え、東京都世田谷区のキャンパスは華やかでスマートな雰囲気も漂う。そんな中、希望に燃え愚直に夢を追いかける宮崎には、粘り強く時間を掛けて実りを目指す耕作とイメージが重なる。