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人間の内面をえぐる強烈な表現力を持った天才 1月26日から東京都美術館で「エゴン・シーレ展」

「エゴン・シーレ展」ポスター
「エゴン・シーレ展」ポスター

 世紀末を経て芸術の爛熟(らんじゅく)期を迎えたウィーンに生き、28年という短い生涯を駆け抜けたエゴン・シーレ(1890-1918)。そのシーレの作品50点が30年ぶりに集結する!

 当時の常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、波乱に満ちた人生を送った天才シーレ。孤独と苦悩を抱えつつ、ナイーブな感受性を持って自己を深く洞察し、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出した。

 一目見れば天才ぶりが分かる作品たちが集結する貴重な機会となる「レオボルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が1月26日(木)から4月9日(日)まで東京都美術館(東京・上野公園)で開催される。

アントン・ヨーゼフ・トルチカ《エゴン・シーレの肖像写真》 1914年 レオポルド家コレクション Leopold Museum, Vienna
アントン・ヨーゼフ・トルチカ《エゴン・シーレの肖像写真》 1914年 レオポルド家コレクション Leopold Museum, Vienna

 短い生涯の間に強烈な表現主義的作品を残し、美術の歴史に名を刻んだ。本展ポスターで見られる≪ほおずきの実のある自画像≫はシーレの自画像のなかでもっともよく知られた作品。自画像を描き続けたシーレは、世紀末のウィーンという多様な価値観が交錯し対立する世界に生きながら、自画像を通して自己のアイデンティティーを模索した。

エゴン・シーレ≪母と子≫ 1912年 レオポルト美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ≪母と子≫ 1912年 レオポルト美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 キリスト教絵画の伝統的な聖母子像を思わせる構図に収められた≪母と子≫という作品。眼と口をしっかりと閉じた母親の表情は、世界との断絶を感じさせる。一方、目を見開いた子どもは恐怖心を露わにしているようだ。シーレの母子像は、平和や愛情の象徴というよりはむしろ、死や不安をほのめかす作品が多い。

エゴン・シーレ《悲しみの女》 1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ《悲しみの女》 1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 シーレの作品にしばしば登場する女性に、シーレと恋仲だったワリー・ノイツェルがいる。≪悲しみの女≫には、黒いスカーフの向こうに、神経質そうな表情の顔がみえる。まるで彼女の思考がこの男で占められて、彼女の悲しみの原因が男にあることが示されているようだ。男はほかならぬシーレで、不穏な描写に2人の複雑な関係があらわれている。
 その原因となったのが、≪縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ≫のエーディト・ハルムスだ。シーレは育ちの良さそうなエーディトに引かれ、2人は結婚する。

エゴン・シーレ《縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ》 1915年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ《縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ》 1915年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

 本展覧会ではシーレだけでなく、同じくウィーン世紀末を生きた、グスタフ・クリムト、コロマン・モーザー、リヒャルト・ゲルストル、オスカー・ココシュカといった強烈な個性を持つ画家たちの作品も紹介されている。

 開室時間は午前9時半から午後5時半まで。金曜日は午後8時までとなる。休室日は月曜日。観覧料は、一般2,200円、大学生・専門学校生1,300円、65才以上1,500円。チケット発売は2023年1月12日(木)午前10時より予約開始。日時指定予約制。詳しい販売方法は後日、公式サイトで発表される。問い合わせは050-5541-8600まで。