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「どうする家康」第9回「守るべきもの」一揆の苦い経験で家康が得た学び【大河ドラマコラム】

 NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」。3月5日に放送された第9回「守るべきもの」では、主人公・松平家康(のちの徳川家康/松本潤)を悩ませた三河一向一揆がようやく終結。三河の内戦にまで発展したこの一揆は、家康にとって苦い経験となったが、同時に大きな学びを得る機会にもなった。

松平家康役の松本潤(左)と本多正信役の松山ケンイチ (C)NHK

 その学びの一つ目が、家臣を信じることだ。前回、本多正信(松山ケンイチ)や夏目広次(甲本雅裕)ら家臣の裏切りが続出し、疑心暗鬼に陥った家康は、妻子を連れて居室にこもってしまう。

 だが、鳥居忠吉(イッセー尾形)から、「主君は家臣を信じるしかない。主君が家臣を信じなければ、家臣は主君を信じない。そうでなければ、謀反の疑いが少しでもある者を、一人残らず殺すしかない」と諭され、「わしはおまえたちを信じる! 供をしたい者だけ参れ」と覚悟を決める。

 放送開始時のインタビューで松本が、家康の優れた点について、「いろんな課題や問題を周囲とシェアし、それぞれ得意な人に任せていく」と語っていたが、この経験がそこにつながっていくのかもしれない。

 こうして劣勢だった戦いを挽回し、水野信元(寺島進)の仲介による和睦で事態は収束。そしてもう一つの学びは、この後の戦後処理の中で経験することになった。

 戦いが決着した後、一揆側に寝返って軍師を務めていた正信が、家康の前に引き立てられてくる。すでにほかの家臣たちから助命嘆願のあった広次を不問にした家康は、正信に「なぜ、弁明しに出てこぬ」と問う。

 「過ちだの、悔いておるだの、さようなことは、たとえうそでも申すことができませぬ」と答えた正信は、理由を尋ねる家康に、「過ちを犯したのは、殿だから」と前置きした後、こう告げる。

 「殿は、阿弥陀仏にすがる者たちの心をご存じない。毎日、たらふく飯を食い、己の妻と子を助けるために戦をするようなお方には、日々の米一粒のために殺し合い、奪い合う者たちの気持ちは、お分かりにならんのでしょう。仏にすがるのは、現世が苦しいからじゃ。生きているのがつらいからじゃ。殿が、おまえが、民を楽にしてやれるのなら、誰も仏にすがらずに済むんじゃ。そのために民は、おまえにたらふく米を食わせているんじゃ。己はそれをなさずして、民から救いの場を奪うとは、何ごとじゃ。このおおたわけが! 悔いなければならんのは、殿でござる」

 少し長いが、大事なのでそのまま引用した。前回、家康はかつて今川義元(野村萬斎)から言われた「われらは民に、生かしてもらっておるのじゃ。よく覚えておけ。民に見放されたときこそ、われらは死ぬのじゃ」という言葉を思い出していた。