カルチャー

【連載コラム 国内外の図書館をめぐる -6-】 街探訪 フランス・レンヌを歩く

木組み構造の家
木組み構造の家

 レンヌの図書館が入る市の複合施設は、駅から歩いて数分の距離。ここから旧市街も目と鼻の先だ。交通手段としてはメトロもあるが、歩いて散策するのがちょうどいい大きさの街だし、中世から続く建築を見上げながら石畳を歩くのがレンヌの楽しみ方でもある。

 図書館を出たら、目の前の広場を横切り、そのまま北に向かってリベルテ大通りを渡ると、その向こう側に街の常設市場がある。野菜、魚介類、肉類、チーズ、郷土食のガレットなど、さまざまな店舗が並び、店の前のスタンドでワイン片手にカキを“イートイン”できるようなところもある。毎月第一日曜には、市場中央の広場にテーブルと椅子を並べて「マルシェ・ア・マンジェ」(食べる市場)というイベントも開かれていて、ブルターニュ産の食材を使ったさまざまな料理と飲みもので休日の昼を楽しめる。

 市場からさらに北に向かって歩くと、市役所広場に出る。周辺にはpans-de-bois(パン・ド・ボワ)と呼ばれる木組み構造の家が並ぶ。ノルマンディやアルザス地方で見るコロンバージュの建物と同じく、木組みのデザインが家ごとに異なっていて個性的な風景を作っている。中世からアンシャンレジームの時代にかけて建てられたもので、今でもレンヌには370軒のパン・ド・ボワの家が残っている。

 市役所広場で一休みしたら、西に向いて歩くとすぐ、レンヌの大聖堂が見えてくる。司教座としてのこの場所の歴史は6世紀までさかのぼる。ゴシック様式の大聖堂が建てられたのは12世紀だが、その後さまざまな理由で改修を余儀なくされ、現存する大聖堂のファサードはクラシック様式。もっとも聖堂内に足を踏み入れると、フランスではあまり見慣れないイオニア式の柱が44本規則正しく並んだ身廊(入口から祭壇にかけてのスペース)で、軽い衝撃を受けるはずだ。ブルターニュ地方唯一のネオクラシック様式の教会でもあり、1906年には国の重要文化財に指定されている。後方のパイプオルガンも圧巻。パリのノートル・ダム大聖堂やマドレーヌ寺院のオルガンを製作したカバヴァイエ・コルが手掛けたもので、定期的にコンサートなども開かれている。

レンヌの大聖堂
レンヌの大聖堂
身廊に並ぶイオニア式の柱
身廊に並ぶイオニア式の柱
大聖堂のパイプオルガン
大聖堂のパイプオルガン

 胃袋を満たす時間が来たら、やはりそば粉のクレープ、「ガレット」を食べるのがブルターニュの旅の“お約束”。探して歩かなくても、大聖堂の真向かいに「ラ・モット・ピケ」というクレープ屋さんがある。上階に「アルドワーズ」と呼ばれる石がうろこ状にはられた外壁が特徴。中は木組みの壁で、レンヌらしい雰囲気を味わえる。もちろん豊富なクレープのメニューから選んでシードルで乾杯だ。(軍司弘子)

食事メニューのそば粉のクレープにシードル
食事メニューのそば粉のクレープにシードル
クレープ店の店内
クレープ店の店内