この絵本読んで!と子どもにせがまれる親、せがまれた記憶を持つ親、そして自分が子どもの頃に同じように本を抱えて親を見上げた経験を持つ人は多い。そらんじるほど何度も読んでもらった本でもまたせがむ。ベテラン司書が読み聞かせについて語った『絵本は親子のゆりかご』(伊藤明美著、NPOブックスタート・東京、税込み770円)が発売された。「子ども・社会を考える」プロジェクトの一環として著者が行った講演を収めたものだ。
伊藤氏は、公共図書館勤務を経て、保育園で司書顧問をつとめている。保育園の玄関の絵本コーナーには、その日読んでもらった絵本も置かれていて、迎えに来た母親に「これ読んで!」とせがむ子どももいるという。なぜ読んでもらったばかりの絵本を「読んで」と言うのか。「本を読んで」は「一緒にいて」という気持ちのあらわれ。「声で抱っこする」という目次の一文は印象的。
司書として長年子どもたちに寄り添い、絵本の読み聞かせを行ってきた著者が、自身の体験をもとに子どもや保護者にとっての絵本の読み聞かせ、そしてその先に続くものを丁寧にひもといた一冊。