はばたけラボ

【はばたけラボ 子育て質問箱】自分のものは自分で 整理整頓できるようになってほしい

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、整理整頓できない娘を心配する親に アドバイスします。

イメージ

 

自分のものは自分で 整理整頓できるようになってほしい

【質問】
 小学校5年生の娘がいるのですが、自分で自分のものを整理整頓することができません。自分の部屋も持たせていますが、服は脱ぎっぱなし、物は出しっぱなしで、親に注意されたときに注意されたものを片付けるだけなので、いつも散らかっています。自分の部屋だけでなく、リビングや洗面所も自分のものを散らかしっぱなしですし、学校の引き出しの中もぐちゃぐちゃです。自分で整理整頓できるようになるにはどうしたらいいのでしょうか。

 

 ▼家事労働することは 人格形成の基礎づくり

 整理整頓ができないのには二つの理由があります。整理したい種類が多すぎることと、それを整頓しておく場所が固定されていないことです。「片付けなさい」「整頓しなさい」「ちゃんとしなさい」という指示語は、小さい子ほど理解できません。「片付いた部屋」「整頓された棚」を大人は簡単にイメージできますが、子どもには結構抽象的過ぎるのです。衣服だけでも、肌着・上着・靴下・ハンカチ・体操服・マフラー・帽子・手袋・マスク・・・と、季節や登校日・休日でたくさんの種類になります。しかも洗濯するもの、たたむもの、明日着るものと、置く場所も変わってきます。登校するときに必要なものがそろわなくて親にしてもらっていると、依存体質が進みます。散らかしっぱなしにしていても、本人が何一つ不自由を感じなければ、やらなくてもいい仕事と学んでいきます。「見つからなくて困った」という体験は、整理整頓を習慣化するのに有効な学びになります。

 引き出しを決めたり、引き出しの中を仕切ったり、使わないものは箱に入れて押し入れにしまい込んだりする作業を一緒にすることも必要です。その時、教えようとするより「あー、さっぱりした」とつぶやく方が効果的です。忘れ物がないように「チェックボード」を作成するのもいいでしょう。準備ができた項目にマグネットを貼るとか、札を裏返すという工夫をすると確認が楽しく、正確にできます。家族にも、準備の具合が視覚的に分かって便利です。家族間の話題が増え、会話も増えます。まずは重要なものに絞り込み、項目を少なくすることがお薦めです。それができれば整理できていないものが減っていますから、その他の片付けは楽になっていきます。

 取り返しのつかない重大な失敗をしないように、小さな失敗を経験させることも親の仕事だと思ってください。洗面所の歯ブラシが決められたコップにおさまっていたり、洗濯してほしい衣類が洗濯機の中に入れてあったりしたら「ありがとう」「たすかった」と褒めてあげましょう。家事労働の報酬は家族の快適な生活と笑顔であって、金銭ではありません。「喜んでくれる」「快適に暮らせる」という積み重ねは「子どもの人格形成の基礎づくり」なのです。

 玄関周辺の掃き掃除、浴槽洗い、ごみの分類やゴミ出し、洗濯ものたたみ、食器洗いなど、一人で責任を持たされる仕事を担わせるのもいい方法です。他の家族がしないから責任感は育つし、家族から感謝の言葉をもらえます。

竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。


 #はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。