カルチャー

小学生プログラミング全国大会、グランプリに栃木の大塚さん 予選を勝ち抜いた47組が力作を発表

グランプリの文部科学大臣賞に選ばれた栃木県代表の大塚陽葵さん(中央)

 小学生がプログラミングしたアプリやゲーム、ロボット作品を披露する「2024年度全国選抜小学生プログラミング大会」(全国新聞社事業協議会主催)の全国大会が3月2日、東京都内で開かれた。最優秀のグランプリ(文部科学大臣賞)には、3次元(3D)映像で粘土遊びできるアプリを制作した栃木県代表の那須塩原市立黒磯小3年、大塚陽葵(ひなた)さんが輝いた。

 この日の全国大会には、1284組の応募者の中から、各都道府県大会(予選)を勝ち抜いた47組が出場。冒頭、出場者と家族らで満員の会場に将棋の藤井聡太七冠のビデオメッセージが紹介されると、会場から大きな歓声が起きた。藤井七冠は「大好きなことに没頭することはとても素晴らしいことです。悔いのないよう思いっきり発表してください」とエールを送った。

 発表作品は、祖父母ら身近な人の困り事の解決や地球環境の保全、地域の観光・伝統工芸・料理の魅力発信、宿題・作文の促進などを目指す、幅広いテーマがそろった。各出場者は約3分間、作品を大型モニターで紹介しながら、制作意図や制作上の工夫・苦労などを説明した。

記念撮影する「2024年度全国選抜小学生プログラミング大会」の出場者=2025年3月2日午後、東京都港区の品川インターシティホール

 グランプリを受賞した大塚さんの作品「未来を描く手」は、3Dコンピュータグラフィックスソフトなどを使い、音声と手の動きに連動して画面で粘土工作を楽しむことができるようプログラミングしたもの。

 大塚さんは発表で「小さいころ、妹が粘土を誤って口に入れていたり、粘土で(部屋が)汚れてしまったりするので、粘土遊びできないことがあった。そこで粘土を使わない粘土遊びもできたらいいなと考えました。この『未来を描く手』を使えば、入院中の子や通学できない子もリモートで学校の図工の授業に参加できます。またお医者さんの手術の練習やイベントでも使えそうです」などと制作目的や用途の広がりを解説した。

 グランプリ受賞後のあいさつでは「家族が私のプログラミングを褒めてくれたので自信がついた。グランプリはとてもうれしい」と喜びを語った。

 大塚さんは前回大会では準グランプリを受賞。審査員の武藤久慶・文科省初等中等教育局教育課程課長は「昨年の作品(手のポーズでシャッターを切る写真自動撮影アプリ「みらいカメラ」)もすごかったけれども、今年はさらにすごい」と今年の作品をたたえた。審査員長の平井聡一郎さん(合同会社未来教育デザイン代表社員)は「高度なテクノロジーを使った素晴らしいアプリです。これからも作品の名称と同様に、未来を描く作品を制作してください」と今後の活躍に期待を寄せた。

発表する静岡県代表の高橋駒子さん。準グランプリに選ばれた

 準グランプリは、作文を手伝うアプリ「作文おたすけアプリ」を開発した、静岡県代表の高橋駒子さん(浜松市立船越小6年)が受賞した。高橋さんは「作文が苦手な人、嫌いな人に使ってほしい。作文そのものを作ってくれるものではなく、作文を楽しく書くためのお役立ちツールです。チャットのアドバイス機能などを使うと、人工知能(AI)が深掘りしたい部分などをアドバイスしてくれたりします」などとアプリの使い方を詳しく紹介した。

 審査員の日本IBMテクノロジー事業本部プラットフォームエンジニアの池澤あやかさんは「すでにこのアプリはウェブサイトに公開し、利用者の声を反映してかゆい所に手が届くような機能まで実装している。プロ顔負けの作品」と高く評価した。

 準グランプリ受賞後に喜びを語った高橋さんは「私にとってプログラミングは“魔法”。プログラミングを教えてくれた母に感謝したい」と話した。

あいおいニッセイ同和損保賞に輝いた富山県代表の花木瑞稀さん(右)

 グランプリと準グランプリ以外の主な受賞者は次の皆さん。
【あいおいニッセイ同和損保賞】花木瑞稀さん(富山県代表、富山市立針原小5年)
【アイティフォー賞】小野正輝さん(山口県代表、防府市立佐波小5年)
【JBS賞】富田純白(ましろ)さん(鹿児島県代表、鹿児島市立広木小5年)
【全国新聞社事業協議会賞】三浦彩乃さん(北海道代表、函館市立大森浜小5年)
【審査員特別賞】上田柚さん(群馬県代表、前橋市立元総社小6年)▽徳島県代表の鳴門市立黒崎小6年・酒井陽向(ひなた)さん、鳴門市第一小2年・酒井ここみさん▽伊藤修一さん(東京都代表、いずみの森義務教育学校6年)▽矢端千佳さん(宮城県代表、大崎市立古川第三小5年)▽長谷川衣梨さん(秋田県代表、北秋田市立鷹巣小6年)

アイティフォー賞を受賞した山口県代表の小野正輝さん(右)
鹿児島県代表の富田純白さん(右)はJBS賞に輝いた
全国新聞社事業協議会賞に選ばれた北海道代表の三浦彩乃さん
審査員特別賞を受賞した群馬県代表の上田柚さん
審査員特別賞を受賞した徳島県代表の(右から)酒井陽向さん、酒井ここみさん
審査員特別賞を受賞した東京都代表の伊藤修一さん
審査員特別賞を受賞した宮城県代表の矢端千佳さん
審査員特別賞を受賞した秋田県代表の長谷川衣梨さん

 全国選抜小学生プログラミング大会は、プログラミング教育が小学校で必修となったことを受け、全国の地方新聞社などでつくる全国新聞社事業協議会が、プログラミング教育の推進や子どもたちの考える力や表現力などの育成を狙いに2020年度から毎年度開き今回で5回目。

 協賛は、あいおいニッセイ同和損害保険、アイティフォー、日本ビジネスシステムズ(JBS)、クレスコ、佐川印刷、クォンツ・リサーチ、Davinci DX。