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万博会場のベンチで、大阪府民による記事を読もう 大阪産材を使ったベンチを万博会場に設置

 大阪産材を使ったベンチをつくり、万博に設置、その後は大阪各地で使ってもらうプロジェクト「想うベンチ―いのちの循環」プロジェクト(エイチ・ツー・オーリテイリング、大阪市)。国内外で活躍する3人のデザイナーが大阪の森を訪問して地域の製材所と形にしたベンチがこのほど完成し、万博会場に設置された。ベンチにつけられた二次元コードから、大阪府民が「いのち」をテーマに企画・取材から制作まで手がけた記事や、大阪の製材所インタビュー、大阪の森の歴史までを掲載したウェブメディアが見られる仕組みになっている。

 これは、大阪・関西万博における「Co-Design Challengeプログラム」に選定されたプロジェクトの1つ。「Co-Design Challengeプログラム」は、万博という機会を活用し、物品やサービスを新たに開発することを通じて、現在の社会課題の解決や、万博が目指す未来社会の実現を狙いとしている。

 大阪の森林面積は、全国で最小の約5万6000ヘクタール。それでも、府全体の約3分の1が森林という。その森林を健全に保つため、地元木材の使用を増やし、森の循環を促進する取り組みをしているエイチ・ツー・オー リテイリングが主体となり、「想うベンチ―いのちの循環」プロジェクトがスタートした。

 ベンチのデザインを担当したのは、佐野文彦氏、辰野しずか氏、松井貴氏の3人。万博開始の約1年前、2024年4月に大阪・南河内の森を訪問することからスタートした。目の前の何十年も生きてきた樹々。いのちに思いをはせるとはどういうことか? 「デザインのための樹」ではなく、「樹のためのデザイン」とは――。デザイナーそれぞれの思いと地域の製材所の技術を合わせ、1年をかけて3つのタイプのベンチが完成した。

 ベンチ制作とともに取り組んできたのが、公募で集まった大阪府民ライターとのメディアづくり。ベンチに二次元コードを設置し、そこからプロジェクトのウェブメディアへとつなぐ。そこには府民ライターが「いのち」をテーマに執筆した記事や、大阪の製材所へのインタビュー、大阪の森の歴史、大阪府民たちに聞いた「大阪らしさ」などの内容が掲載されている。ベンチに座りながら、それを作った人、大阪の森、そしていのちなどに思いをはせるきっかけを作り出す。

 万博終了後、ベンチは、プロジェクトの主旨に賛同した大阪府堺市新檜尾台小学校などへの設置が予定されている。