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家庭ごみ有料化の効果 野々村真希 農学博士 連載「口福の源」

 私たちが生活する中で発生するごみ(家庭ごみ)は、廃棄物処理法の定めのもと、居住する自治体により収集・処理されている。「家庭ごみ有料化」は、そのごみ収集・処理の手数料を自治体が住民から徴収する制度である。ごみ処理の手数料を上乗せした価格の袋をごみ袋として自治体が指定する方法や、市販のごみ袋に貼り付けるシールを自治体が販売するという方法で実施されている。家庭ごみ有料化について精力的に調査・研究をされてきた山谷修作(やまや・しゅうさく)氏のウェブサイトによれば、2025年4月の時点で、家庭ごみのうちの可燃ごみの有料化を実施する自治体は、日本全国市区町村のうち66%にのぼる。

 徴収される手数料は大きい袋1枚当たり2050円のところが多く、住民にとって大きな負担になるわけではない。が、有料化はやはり家庭ごみを減らすようである。家庭ごみの中に含まれていたリサイクル可能物(ペットボトルとか古紙とか)の分別が促進されて家庭ごみが減っているのかなぁと、はじめ思った。けれど、前出の山谷氏の調査結果によれば、どうやら分別されたリサイクル可能物も含めたごみ全体の量が減っているようである。へー、そうなんだ! じゃあ家庭ごみ有料化は、家庭ごみの一部を占めている食品ロスの削減にも効果があるのかな? 

 家庭ごみ有料化が食品ロスに与える影響を見るには、特定の自治体に関して、有料化される前と後で、自治体住民の食品ロスの量やそれに関連する行動を調べ比較するのが最も妥当だろう。しかしながら、有料化される予定の自治体にタイミングよく出会えなかったので、有料化を実施している自治体の住民と、そうではない自治体に住む全国の住民を対象にアンケートをして、その両住民の間で、食品を廃棄する頻度や、食品ロスを防ぐ行動をどの程度とっているかを比較してみることにした。すると、有料化実施自治体の住民の食品廃棄頻度の平均値が実施していない自治体の住民のそれよりも低いという結果は得られず、また、有料化実施自治体の住民の方が食品ロスを防ぐ行動を平均的にみてよくとっているという結果も、残念ながら得られなかった。

 一方で、有料化を実施する自治体の住民の中には、有料化によって家庭で食品を捨てることが「とても少なくなった」と思っている人が1~2割いたことも明らかになった。その人たちは、他の人たちより食品を廃棄する頻度は低く、食品ロスを防ぐ行動もよくとっていた。これをふまえると、有料化は一部の住民の食品ロス予防行動を促進し、食品ロス削減に効果を発揮したと考えてもよさそうである。しかし、先の結果をふまえると、住民全体への総合的な効果としては、ごく小さいと考えるのが妥当だろう。残念。

 去年、私の住む東京23区においても、家庭ごみ有料化にむけた検討が進んでいると報じられた。家庭ごみの削減は期待されるけれども、食品ロスを減らすには他の効果的な施策はやはり不可欠ということだ。まだまだ自分は家庭の食品ロスについて、考え続けないといけなさそうだ。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.28からの転載】