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ユニバーサルお得意の動物パニック映画の系譜を継いだ『ビースト』 夏、青春、淡い恋、SF、ノスタルジー…定番の要素を組み入れた『夏へのトンネル、さよならの出口』【映画コラム】

ユニバーサルお得意の動物パニック映画の系譜を継いだ『ビースト』 夏、青春、淡い恋、SF、ノスタルジー…定番の要素を組み入れた『夏へのトンネル、さよならの出口』【映画コラム】 画像1

『夏へのトンネル、さよならの出口』(9月9日公開)

(C)2022 八目迷・小学館/映画「夏へのトンネル、さよならの出口」製作委員会

 ある田舎町で「ウラシマトンネル」の存在がうわさされていた。その不思議なトンネルに入ると、年を取る代わりに欲しいものが手に入るのだという。

 事故で妹を亡くしたことが心の傷となっている高校生の塔野カオル(声・鈴鹿央士)は、偶然トンネルを発見し、自身の理想像と現実との違いに苦悩する転校生の花城あんず(声・飯豊まりえ)と共に、トンネルを調査してそれぞれの願いをかなえるための協力関係を結ぶが…。

 八目迷の同名小説をアニメーション映画化。監督・脚本は田口智久。トンネルを媒介とした変則的なタイムスリップもので、夏、青春、淡い恋、SF、ノスタルジーという定番の要素を組み入れたジュブナイルの一種。大昔の「少年ドラマシリーズ」のことを思い出した。

 田舎町の写実的な風景と、トンネル内部の赤を基調とした幻想的な風景が対照の妙を成し、現在(スマホ)と過去(ガラケーやMD)、二つの時代をつなぐビニール傘などの小道具の見せ方も面白いのだが、トンネルの内部と外部との時間経過の違いの描写が甘く、トンネルの謎解きもないので、もやもやさせられるところがある。

 声優ではない、鈴鹿と飯豊がなかなか頑張って声を当てていた。この2人なら、この題材を実写で見てみたい気もしたが、高校生役はいささか厳しいか…。

(田中雄二)