ジェンダー

NHKが“多様性”を意識した番組制作をさらに推進  12番組が国際的プロジェクトへ参加

 放送コンテンツにおいてもダイバーシティの実現を――。日本放送協会(NHK)は、多様な視聴者のニーズに応えるコンテンツの提供を目指し、さまざまな視点やテーマの採用を推進している。

 その一環で2021年4月から、英国の公共放送・BBCが2017年に立ち上げたプロジェクト「50:50 The Equality Project」に世界30カ国・50を超える組織とともに参加。ドラマに出演する俳優や情報番組の進行役、報道番組で取り上げる専門家などのジェンダー(性差)バランスなどを意識し、多様な視点を取り入れた番組制作を進めている。

 「50:50 The Equality Project」は、「番組の出演者の女性の割合を測定し、増やす」というアイデアからスタートした。番組コンテンツにおいて、多様な社会を公正に映し出すことを目指しており、現在は、人種や障害を持つ当事者なども計測の対象としている。「変化を起こすためにデータを収集する」「自分たちの裁量で決められる出演者を測定する」「コンテンツの品質は妥協しない」という三つの基本原則に基づいて実施。出演者の割合を可視化し、偏りがあれば制作現場の担当者が次のコンテンツ制作に生かしていく。

12の番組がプロジェクトに参加
12の番組がプロジェクトに参加(C)NHK

 NHKはこのプロジェクトに、日本のテレビ局として唯一参加。当初、「大河ドラマ『青天を衝け』」「連続テレビ小説『おかえりモネ』」「よるドラ『きれいのくに』」「あさイチ」「ハートネット TV」「ノーナレ」の六つの番組でプロジェクトに参加。出演者を男女別にカウントし、現状のジェンダーバランスを把握することからスタートした(性別は出演者が自認する性で計測)。プロジェクトの認知や理解は徐々に広がり、今年度は、「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」「クローズアップ現代」「サタデーウオッチ9」「日曜討論(2023年10月~)」「ドキュメント 20min」が加わり12の番組が参加。このプロジェクトの手法に基づいて男女比を分析し、取材・制作現場への理解を広げながら、多様性を意識したコンテンツ制作をしている。

 プロジェクト参加当初のコンテンツ(6番組)における男女比は61:39だったが、2023年3月時点(8番組)では58:42と、差が縮まってきている。プロジェクトに参加した番組の制作現場では、男女比を意識することをきっかけに、取材テーマやドラマの題材を検討する時点から多様性を自然と意識するようになったり、画面の裏側にある取材・制作チームの男女比にも変化が見られたりした番組もあったという。2024年度からは、地域放送局を含めて同プロジェクトに参加する番組を増やし、NHK全体へ取り組みを広げていく予定だ。

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資料提供=NHK