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香港映画の光と影が浮かび上がる『カンフースタントマン 龍虎武師』/“家族”を追い求める人々の姿を描く『ファミリア』【映画コラム】

『ファミリア』(1月6日公開)

(C)2022「ファミリア」製作委員会

 山里で孤独に暮らす陶器職人の神谷誠治(役所広司)の下に、一流企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任している息子の学(吉沢亮)が、婚約者のナディアを連れて帰ってきた。学は結婚を機に退職して焼き物を継ぎたいと話すが、誠治は「とても食べていけない」と反対する。

 一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年マルコスは、半グレ集団に追われていたところを助けてくれた誠治に、亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つようになる。そんな中、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲う。

 脚本・いながききよたか、監督・成島出によるヒューマンドラマ。

 施設出身で、妻を亡くし、一人で暮らす誠治、難民だった女性を妻にするその息子、誠治と同じく施設出身で、間もなく定年を迎える刑事(佐藤浩市)、ブラジル人が起こした事故で家族を失い、ブラジル人を憎む半グレの男(MIYAVI)、居場所が見つからない在日ブラジル人たち…。形も国籍も境遇も違うが、彼らが追い求めているものは“家族”であり、人とのつながりだ。

 ただ、残念ながら、移民、難民、差別、独居、暴力、恋愛、人質…と、いろいろと盛り込み過ぎて話の焦点が定まらないところがある。時折、いい場面もあるのだが、それも散発的で持続しない。全体的にバラバラな印象を受け、バランスの悪さを感じさせられる。

 父親役の役所はもちろん、出来のいい息子役で吉沢も好演を見せるだけに、とても惜しい気がした。

(田中雄二)