優柔不断な家康は、彼女たちにたびたび窮地を救われてきた。サブタイトルに「どうする」がつく回はこれまで7回あるが、前述の通り、この回を含めてそのうち4回は女性たちが重要な役割を担っているという事実が、そのことをよく表している。
そして、女に生まれたことを嘆いていたお市も、3人の娘、茶々、初、江が戦国時代の幕引きに関わることはよく知られている。
中でも、三女の江は江戸幕府2代将軍・徳川秀忠の正室、そして3代将軍・徳川家光の母となり、天下を手にする。つまり、「力さえあればどんなに大きな夢も描ける」というお市の言葉を、娘がかなえることになる。
ここで再びこの回のお万の言葉を振り返ってみると、瀬名との対話の中で、次のように言い残している。
「私は、ずっと思っておりました。男どもに戦のない世など作れるはずがないと。政(まつりごと)もおなごがやればよいのです。そうすれば、男どもにはできぬことが、きっとできるはず」
本作における女性たちの活躍を踏まえると、逆境をたくましく生き抜いたお万のこの言葉の説得力はさらに高まる。そしてそれは、娘がその夢をかなえたお市にも通じる。決して「男であれば」と嘆く必要はないのだ。
戦国という厳しい時代を生きた女たちのたくましさ。それは私たちに、生き抜くことの尊さを教えてくれているのではないだろうか。
(井上健一)