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「どうする家康」第20回「岡崎クーデター」謀反を通して対話の尊さを描いた作劇の妙【大河ドラマコラム】

 すると虎松は、「民を恐れさせる殿様より、民を笑顔にさせる殿様のほうがずっといい。きっとみんな幸せに違いない。殿にこの国を守っていただきたい。心の底では皆、そう願っていると存じます」と答える。

 虎松も、家康を襲撃した際、捕らわれながらも、無罪放免にされたことがある。このとき、家康の人柄に触れたことが仕官に影響したことは、その後の様子を見れば明らかだ。そしてそれは、巡り巡って謀反を防ぐことにもつながった。

 主君と家臣の信頼関係を裏切る謀反を描きつつ、それを阻止したのは、信頼をつなぎとめる人同士の対話だったという作劇の妙。コミュニケーションが容易になった今の時代だからこそ、その重みがより増している「人と人が顔を合わせて言葉を交わす対話の尊さ」に改めて気付かされた回だった。

(井上健一)

瀬名役の有村架純(左)と山田八蔵役の米本学仁 (C)NHK