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【週末映画コラム】“戦争とゴジラ”に回帰した『ゴジラ-1.0』/眼鏡作りの先達たちへの思いを込めた『おしょりん』

『おしょりん』(11月3日公開)

(C)「おしょりん」制作委員会

 明治37年、福井県足羽郡麻生津村の庄屋の長男である増永五左衛門(小泉孝太郎)の妻・むめ(北乃きい)は、育児と家事に追われる日々を過ごしていた。

 そんなある日、大阪で働いていた五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が帰郷し、村をあげて眼鏡作りに取り組まないかと提案する。その頃眼鏡はまだほとんど知られていなかったが、活字文化の普及により今後は必需品になるというのだ。初めは反対していた五左衛門も、視力の弱い子どもが眼鏡をかけて喜ぶ姿を見て挑戦を決め、村の人々を集めて工場を立ち上げる。

 明治時代の福井県を舞台に、同地の眼鏡産業の礎を築いた人々の愛と情熱を描く。藤岡陽子が史実を基につづった同名小説を、児玉宜久監督が映画化。タイトルの「おしょりん」とは、田畑を覆う雪が固く凍った状態を指す福井の方言だという。

 最近、こうした地方発の映画が増えてきたが、眼鏡作りの先達たちへの思いを込めたこの映画には、ハウツー物としての要素もあり、興味深く映った。自分も福井県の鯖江あたりが、世界に誇る眼鏡の一大産地だとは知らなかったので、こうした映画には、そうしたことを人々に広く知らしめるという効用もある。

(田中雄二)