『劇場版ドクターX』(12月6日公開)
フリーランスの天才外科医・大門未知子(米倉涼子)は、某国の大統領の命を救うため日本を離れていた。その頃、東帝大学病院ではすご腕の外科医・神津比呂人(染谷将太)が新病院長に就任。彼は政財界にも顔が利き、双子の弟・多可人(染谷二役)は医療機器メーカーのCEOで資金のバックアップもある。
比呂人は病院の徹底的な合理化を進め、医師や看護師を次々と辞職させていく。かつての同僚・森本(田中圭)に呼び戻された未知子は比呂人と意気投合するが、未知子の師匠・神原晶(岸部一徳)と会った比呂人は顔色を変える。一方、森本は未知子の過去を探るため広島・呉へ向かう。
2012年10月からテレビ朝日系列で7シリーズにわたって放送された医療ドラマ「ドクターX 外科医・大門未知子」のシリーズ完結編となる劇場版。シリーズ初の映画化で、未知子の誕生の秘密や半生が描かれる。監督は田村直己、脚本は中園ミホ。
内田有紀、勝村政信、鈴木浩介、今田美桜、遠藤憲一、西田敏行ら、おなじみ東帝大学病院関係のメンバーが再結集。また研修医役で西畑大吾、未知子の過去を知る呉の開業医役で綾野剛、医学生時代の未知子役で八木莉可子が新たに参加。
さらに、伊東四朗が演じる毒島隆之介がドラマ第3シリーズ以来久々に登場し、ドラマ全シリーズのナレーションを務めた田口トモロヲが多可人の主治医役で初出演するなど、完結編にふさわしい多彩なキャストが登場する。
そんなこの映画は、ドラマシリーズの約束事や人間関係の面白さを生かしながら、その中に新たに未知子の過去や未知子と晶のつながりを描いているのが見どころ。もちろん、これまでのシリーズを見知っているのに越したことはないが、単品の映画として見ても十分に面白い。
ただ「命の尊さ、大切さ」や「生きること」というテーマを描いたこの映画が、先頃亡くなった蛭間重勝院長役の西田の遺作となったことが残念。いい意味で、このシリーズでは妖怪を思わせるような怪演を披露してきた彼の演技がもう見られないと思うと寂しい限りだ。
(田中雄二)