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舌の衰えは大歓迎!? 【蝶花楼桃花 NEWS箸休め】

 小学生になったばかりのころ。祖父が美味(おい)しそうに食べているものが、気になって気になって仕方がなかった。

 よく生牡蠣(なまがき)を食べながら日本酒を呑んでいた祖父。大事そうに、ゆっくりゆっくり味わって食べている感じがとにかく美味しそうに見えた。

 「おじいちゃん、私もそれ食べたい!」と言ったけど、「まだ子どもには食べられないし、美味しくないよ」と断られた。

 私は心の中で、あんなに美味しそうに食べているのに嘘(うそ)だ!きっと、おじいちゃんは食べたいからあげたくないんだ。ケチ!と、ぷりぷり怒っていた。

 しかし何度も何度もせがむ私に根負けした祖父は、「美味しくないと思うよ。本当にいいの?」と言った。やったー。ついに食べられる!〝当たり前だのクラッカー〟ばりの勢いで私は「うん!」と返事をした。

 念願の、生牡蠣。ツルッと口に入れたら・・・、うまい!・・・っとなるわけがなく、生臭いにおいと気持ち悪い食感に「うぇーっ」と吐き出した。

 ほら、言わんこっちゃないという表情の祖父。本当にビックリするほど美味しくなかった。おじいちゃんはなんであんなに美味しそうに食べているんだろう、不思議でならなかった。

 スースーするカリンのど飴も、珈琲も、この調子で食べさせてもらったが、もちろん玉砕。なぜなぜが止まらなかった。

 調べてみると、子どもは味覚センサーが大人の3倍もあるんだそうだ。苦味は毒、酸味は腐敗と本能的に危険を察知し避けるが、経験値により複雑な味を理解できるようになるという。

 まぁ、舌自体は多少、鈍感になるということだ。体力の衰えを感じて、メンテナンスに励んでいる今日この頃な私。

 体力の衰えには抗(あらが)いたいが、舌の衰えは大歓迎なのかもしれない。日本酒と生牡蠣を美味しくいただきながら、心底そう思う。

 

ちょうかろう・ももか 東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入り。24年7月、31日連続ネタおろし独演会「桃花三十一夜」を池袋演芸場で開催、大成功をおさめる。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.11からの転載】