モデル、女優、アーティストとして活躍する西内まりやが、2023年1月13日から上演される音楽劇「李香蘭-花と華-」で舞台に初挑戦する。本作で西内が演じるのは、実在した、伝説の歌姫・李香蘭。本名を山口淑子という彼女は、「夜来香」「蘇州夜曲」などの歌がアジアで大ヒットし、戦時中の中国と日本を熱狂させたスターだった。西内に役作りについて、初めての舞台挑戦への思い、さらには23年の目標などを聞いた。
-舞台に挑戦しようと思った心境を教えてください。
本作のプロデューサーでもあり、演出もされる良知(真次)さんからお声掛けいただいたのがきっかけでした。以前から、舞台に出演することについてマネジャーと話してはいましたが、経験もなく、自信もなかったので、自分には到底できるものではないと思っていたんです。私は、11歳から芸能界でお仕事をさせていただいていますが、映像しかやってこなかったんですよ。なので、20代後半になって、新しいことに挑戦するのは怖い思いもありました。私自身、ミュージカルをよく見に行きますし、大好きなのですが、それだけに雲の上の存在に感じていたんです。
ただ、マネジャーから、李香蘭さんの半生という題材がとてもすてきだと聞き、調べていくうちにとても魅力的な方だと知って、気持ちが変わっていきました。本当にこんな方がいたんだという衝撃と、無理かもしれないけどやってみたいという気持ちが強く生まれてきて…。そんなときに、良知さんからの熱い思いが書かれたオファーメールをマネジャーから見せてもらって、そこに書かれていた言葉にまた心を動かされて、やってみようと決意しました。
-李香蘭の半生に共感できるところも多かったですか。
彼女の持っている芯の強さや、柔らかさというものは、私が目指している理想の女性像に近いものだと思いますし、私が失くしたくないと思っているものを、彼女も持っていると感じました。しかも、戦時下に、表現者として音楽も芝居もしていた。そうした方がいることを知らなかったので、その姿勢に感銘を受けました。私も、歌を歌い、演技もして、モデルのお仕事もしてと、いくつもの表現方法を持っていますが、「本当は何がやりたいの?」と言われた経験がありました。私の中では、どれもやりたい表現であって、どれかに絞るということではないんです。いつかこれが一つにつながると思ってやっているのですから。その思いは、李香蘭さんが過去にやってきたことと通じるものがあると思いました。
-なるほど。
それから、彼女は歌が大好きで、歌を届けたいという純粋な思いで活動していたのに、スターになるにつれ、忙しさに飲み込まれ、さまざまなことに気付けないまま、過ちを犯してしまった。「自分は本当は何がしたかったんだろう。歌で幸せや癒やしを届けたかっただけなのに…」という気持ちは、私がまさに抱えていたものでした。私も歌が歌いたいという思いで芸能界に入ったんです。ですが、気付けば本当に忙しくなって、自分を見失ってしまったこともありました。なので、今、こうしてまた歌を歌わせていただく機会を頂けたことにとても縁を感じました。
-そうした李香蘭をどのように演じたいと考えていますか。
李香蘭さんの日本に対する思いと、中国に対する思いを大事にしたいと思います。彼女は、日本が敗戦した後、軍事裁判にかけられ、死刑になるかもしれないという状況にまで追い詰められましたが、その当時、どんな思いで過ごしていたのか、今回、演じるに当たってたくさん調べさせていただきました。資料や彼女のインタビューを読んでいくと、彼女はどちらの国も愛して、どちらの国も自分の祖国だと思っていたと感じました。彼女の“日本と中国の架け橋になりたい”という思いが少しでも伝わればいいなと思います。