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村井國夫「ハリソン・フォードさん的には、レッドハルクに変貌するところが注目です」『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』【インタビュー】

-今回のサディアス・ロスという役を吹き替えてみてどんな感じでしたか。

 今回は大統領役ということで、権力者なわけですから、落ち着きがあって、自分が背負っているものの大きさも表現しなければなりません。ところが、いかにも権力者というお芝居ではなくて、さりげなく自然にやっていながら、観客に威厳を感じさせるというのは、やはり役者としての長いキャリア故なのかなと思いました。彼の若い頃は、ただきれいなスターだと思っていましたが、年齢を重ねるうちに、いい俳優だと思えるようになったので、せんえつですけれども、そう感じさせるところがハリソンさんの魅力だと思います。

-今回の吹き替えは難しかったですか。

 特に難しいと感じたところはないですけど、日本語吹き替えの演出の方から、吐息や吸息といった息の使い方から、何かを考えている時の声というようなところまで、細かく指示をしていただいたので、難しいといえば難しかったけれど、楽しいといえば楽しかったという感じです。今回はいろんな意味で勉強になりました。

-完成作を見た印象は?

 派手なアクションと人間ドラマがうまくミックスされていて、ただの漫画みたいなものではなくて、人間が成長する姿や他者との関係性が描かれています。若きキャプテン・アメリカは、アベンジャーズを再開したいと思っていて、その中で悩みながら成長していく。一方のロスはレッドハルクになっていく…。ハリソンさんはこんなこともやるんだ。すごいと思いました。彼の表現の仕方が素晴らしくて、彼が楽しみながらやっていると感じました。

-マーベル映画の魅力についてはどう思いますか。

 最近はダーティなヒーローもいますが、やっぱりスカッとする昔ながらのヒーローものであるところがいいですね。今回も、正当なヒーロー、美しいヒーローという感じがしました。僕が若い頃に見ていたスーパーマンもそうでしたが、正当なヒーローを見るといいなと思います。

-村井さんにとって吹き替えの仕事はどんな位置付けになりますか。

 他人のお芝居に声を当てるわけですから、そういう意味では僕の仕事の中では一番難しいです。あとは日本語と英語なのでリズムが違います。ただ僕は、ハリソンさんをやることが圧倒的に多いので、演じているうちに、こういう言い方をするのかとか、彼の癖がだんだんと分かってきました。さっきお話した息の使い方も含めて細かいお芝居をなさる方なので、そのタイミングなども分かっていた方がいいと思います。彼の演技を何回もスローで見ていると、こういう表現をするんだという発見があります。それが自分が演技をする時のヒントになったりもするので、難しいけれど楽しいところもあります。今は吹き替えの技術も発達したので、昔よりもだいぶ楽にできるようになりました。

-村井さんがイメージするハリソン氏の声はどんな感じなのですか。

 ハリソンさんよりも僕の方がちょっと声が低いんです。ハリソンさんは、例えばインディがヘビと出合って興奮した時などは高い声もお使いになるように、全体的にちょっと高めなんです。それは意識していましたが、今回は年齢もあってか落ち着いた、渋い感じの声でした。

-最後に、この映画の見どころをお願いします。

 やっぱりキャプテン・アメリカがどのように成長していくのかというところでしょうか。彼(アンソニー・マッキー)は本当にスマートな美しい肉体の持ち主で、アクションもキレのある素晴らしい動きをしています。その派手なアクションをぜひ楽しんでいただければと思います。ハリソンさんは、やっぱりレッドハルクに変貌するところが見どころですね。

(取材・文・写真/田中雄二)

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