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【映画コラム】夏の日の少年たちが頑張る映画『ベスト・キッド:レジェンズ』『蔵のある街』『海辺へ行く道』

『海辺へ行く道』(8月29日公開)

(C)2025映画「海辺へ行く道」製作委員会

 瀬戸内海の海辺の町でのんきに暮らす14歳の高校美術部員・奏介(原田琥之佑)。この町はアーティスト移住支援を掲げ、怪しげなアーティストたちが往来している。奏介とその仲間たちは、演劇部に依頼された絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと、忙しい夏休みを送っていた。そんな中、奏介たちにちょっと不思議な依頼が飛び込んでくる。

 三好銀の人気漫画「海辺へ行く道」シリーズを、横浜聡子監督が映画化。とある海辺の町(ロケは淡路島)を舞台に、ものづくりに夢中な子どもたちと秘密を抱えた大人たちが織り成す日々を、陽気なユーモアと想像力で描いた群像劇。

 奏介を取り巻く人々に麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春、諏訪敦彦、村上淳、宮藤官九郎、坂井真紀らが顔をそろえる。

 登場人物が皆一風変わっている。何だかジャック・タチ、ウェス・アンダーソン、オタール・イオセリアーニ、ロイ・アンダーソンあたりが好む、ブラックユーモアに満ちたシュールでアイロニカルな世界を、日本の海辺の町で展開させたような感じがした。

 その中で芸術や周囲の人々に対して純粋な心で接する奏介のイノセントぶりが際立つ。原田琥之佑が『サバカン SABAKAN』(22)に続いて“夏の日の少年”を好演している。

(田中雄二)