『蔵のある街』(8月22日公開)

岡山県倉敷市に住む高校生の蒼(山時聡真)と祈一(櫻井健人)と紅子(中島瑠菜)は、小学校からの幼なじみ。ある日、蒼と祈一は、紅子の兄で自閉スペクトラム症のきょんくん(堀家一希)が神社の大木に登って叫んでいる場面に遭遇する。
きょんくんをなだめようと、とっさに花火を打ち上げる約束をした蒼だったが、紅子から怒りの言葉をぶつけられてしまう。紅子の涙に約束の重みを痛感した蒼たちは、約束通り街で花火を打ち上げるべく奔走するが…。
昔ながらの街並みが残る岡山県倉敷市の美観地区を舞台に、街で花火を打ち上げようと奔走する高校生たちの奮闘を描いた青春ドラマ。
コロナ禍に日本各地の街で開催された「サプライズ花火」のエピソードを基に、高校生たちの強い願いが街中の人々を巻き込んで大きな希望になっていく様子を描く。
蒼たちの挑戦をサポートする学芸員役でプロフィギュアスケーターの高橋大輔が映画初出演。監督・脚本は『小さいおうち』(14)『家族はつらいよ』(16)といった山田洋次監督作の助監督や共同脚本を務めた、倉敷市出身の平松恵美子。手嶌葵が主題歌を担当。
正直なところ、地方自治体が製作の自主映画的な粗さや不器用さを感じさせるところもあるが、山時聡真、中島瑠菜、堀家一希ら若手俳優たちの好演もあり、思わず若者の純粋な熱意を応援したくなるような率直さがこの映画の美点だ。
何より、倉敷に行ってみたいと感じさせたのだから、それだけでもご当地映画としては成功したと言ってもいいと思う。