堂島リバーフォーラム(大阪市)で12月17日、小学生の絵画展である「第4回堂島こどもアワード」表彰式が開催されました。低学年の部では鈴木仁乃さん(3年生)の「私はみんなのおい者さん」が、高学年の部では山口ルイ剛郎さん(6年生)の「三号大橋鉄道」が大賞に選ばれました。その他に、優秀賞(低学年1人・高学年1人)、審査員特別賞(低学年4人・高学年3人)、佳作(低学年・高学年各10人)、入選(低学年・高学年各10人)の合計51点が選出されました。
「堂島こどもアワード」は、無限の可能性を秘めた子どもたちの心の中にある光の扉を開くお手伝いをしたいという願いからスタート。
審査は日本画家で日本芸術院会員の千住博さん、東京都美術館館長の高橋明也さん、美術史家で明治学院大学教授の山下裕二さんが務め、表彰式では高橋明也さんと山下裕二さんが入賞作品について講評を行いました。
写真:左から審査員の千住博さん、高橋明也さん、山下裕二さん
山下裕二さん:今回この賞を入選した方の作品は、すごくレベルが高かったと思う。特にいくつか具体的な作品についてコメントしておくと、(低学年の部大賞の)鈴木仁乃さん(3年生)の「私はみんなのおい者さん」。木も動物も何でも治してあげるお医者さん、まず発想がすごくいいですね。ここに描かれている人たちの人物の表情も、すごくいい。これからもずっと描き続けてください。
それともう一つ、高学年の部大賞の山口ルイ剛郎さん(6年生)。今回の絵もすごく細かく描き込んで、去年より一層進化しているなと思って、僕はとても高く評価しました。
高橋明也さん:
優秀賞はメランコリックな感じが、低学年の須藤綾稀さん(3年生)の「ツリー・オブ・ブック」。夜の木の上で、みんな本を読んでいるんだね。上の枝にはネコちゃんが寝ている。なかなか大人っぽい絵だなという実感がありました。
大前実諒さん(6年生)の「心をこめて伝えること」も、すごくメッセージがありますね。
山下裕二さん:
強いメッセージがありますね。(作品説明を)読んでみると、「未来になるとすべての機械やコンピューターで情報を処理する時代になっている。自分の手でかくということをしなくなった世界に心をこめて相手に気持ちを伝えることのできる“紙と鉛筆”をプレゼントしたい」。画面の真ん中に大きく紙と鉛筆が描いてある。すごくメッセージ性が強いよね。さすが高学年の作品だと思いました。
高橋明也さん:
未来志向だね。
山下裕二さん:
高学年には高学年なりの良さがあるし、低学年には低学年なりの良さがあるんですね。審査評にも書きましたが、子どもならではのすごくイノセントな、純粋な、技術とは別の部分での子どもにしか描けない絵というのも評価したいけれど、逆に子どもだけど大人顔負けの描写力を持っている、そういう作品も評価したいと思って、今回選びました。
審査員特別賞は、石田彩弥さん(3年生)のクマのぬいぐるみを抱っこしている「たいせつなクマ」で、これは何と言っても自画像なんだろうけれども、とっても表情がいいですね。自分にとって大切なものを描き込んだ、とても微笑ましい作品だと思います。
高橋明也さん:
クロちゃんっていう黒ネコがいたんだ、かつて。
僕は阪口夏帆さん(3年生)の「フクロウのゆめ」。青と紫がすごく強くて夢見がちな色なんだけど、僕はこういうのが好きなんだなと、今確認できたんですね。というのは、もう一つの永井秀弥さん(4年生)の「イカ」。こっちも色味を見たら同じなんだよね、青と紫の色使いで。こういうのに無意識のうちに反応しているんだなと思いました。
山下裕二さん:
審査員特別賞に選んだ、米田るあさん(5年生)の「私の夢のワンダーランド」。あなたの絵はすごく大人っぽい絵だと思いました。小学生とは思えないぐらいの確かな描写力があって、すごく感心しました。これからもどんどん描き続けてください。
五島燎さん(2年生)の「花畑の中の私たち」、それともう一人、千住(博)さんが選んでいるのが矢本啓さん(2年生)の「人魚のぼくと海の仲間」。たくさんの魚を描いて、楽しい絵ですね。
それと高学年で千住さんが選んでいるのは、 多田憲太さん(6年生)の「おいしいぶどうをおばあちゃんへプレゼント」も楽しい絵ですね。ブドウが山盛りになっている絵です。
来年も出そうっていう人はぜひ、さらに上の賞をもらえるように頑張って描いてもらいたいと思います。どうもありがとうございました。
千住博さん:
今回拝見して 特に心に響く思いがありました.
こちらが低学年の大賞で、こちらは高学年の大賞です。どちらも本当に素晴らしい作品なんですが、どちらも病院を描いているんですね。こちらは“なんでも病院”で 、傷ついた動物や子供たちの傷ついたものを治していきたいという作品です。こちらも未来のあるべき世界ですが、病院の姿がとても印象に残りました。
芸術というのは、その時代の足りない部分を描き出して、あるべき世界を示していく役割があると思います。
今、子供たちの心に迫ってくるものというのは多様な色彩、多彩な生命の姿であったり、平和な夜の姿であったり、お腹いっぱい食べて元気になってほしいという姿であったり、輝かしい未来の姿であったり…
今の時代というものを映し出して、とても心が痛む思いもありますが、 同時にこの子供たちが将来大きくなって世界を牽引して、あるべき世界を作っていく。彼らが夢見るあるべき世界はこういうことなんだと感じる。とても励まされる思いもありました。
そういう意味で とても感動しながら審査をさせていただきました。本当に素晴らしい作品が 審査が終わった後も心に残っています。どうもありがとうございます 。