高知県と高知大学は「IoPプロジェクト国際シンポジウム~農業DXの現状と未来~」を2月20日、東京都内で開き、出席した濵田省司高知県知事は農業データ共有基盤「SAWACHI」を中心に、県が産官学連携で取り組む「IoPが導くNext次世代型農業への進化」事業(IoPプロジェクト)を、さらに進める意向を示した。
濵田知事はまた、IoPプロジェクトが同日、内閣府の地方大学・地域産業創生交付金「展開枠」への採択の内示を受けたことを明らかにした。同事業は2018~22年度の5年間、交付金による国の支援を受けたが、事業の加速、強化、拡大へ今後さらに国費が投入される計画として申請される。
見える化、使える化、共有化
IoPとはInternet of Plants(植物のインターネット)の頭文字をとったもので、学内にIoP共創センター(北野雅治センター長)を置いて取り組む高知大学は「作物の生産を決定づける生理生態情報を『見える化』し、合理的な営農支援情報として『使える化』し、それらの情報を産地で『共有化』する仕組み」と説明する。
具体的には、県内の農家の生産・栽培や出荷のデータを、オンラインで独自のデータ基盤(2022年9月に運用を始めたSAWACHI)に集約し、病害虫の発生状況や気象、市況などのデータも集めて分析、共有し、現場への指導に役立て収益向上に結び付ける仕組みだ。
SAWACHI利用、全国へ
この日のシンポジウムでは、高知大の担当者や全国農業協同組合中央会(JA全中)の山田秀顕常務理事らも出席し、パネルディスカッション「農業DXの現状と未来」を行った。
その中で濵田知事は「IoPプロジェクトにより、経営規模の小さい農家を含め、県内農業の高付加価値化を推し進めたい。高齢化や生産資材高対策にも活用できる可能性がある。農業普及指導員らの役割がより重要になっていく」と説明した。
さらにSAWACHIについて「普遍性の高いシステムとして構築されており、全国13の自治体が利用に向け関心を示してくれている」とし、シンポジウム後の記者会見では「展開枠では県外での技術応用の道を考えていくことになる。北海道、九州各地との連携を考えている」と述べた。
高知県は施設園芸の先進県で、データ駆動型の農業の普及率が全国一だが、濵田知事は「IoPプロジェクトとして水産業向けも開発を進めており、林業に関しても計画が進んでいる」とも語った。
システム関連産業を振興
濵田知事はまた、パネルディスカッションで「システムの維持・管理、関連機器やサービス・アプリの開発を進める県内産業の拡大へと広げていきたい」と意欲を示した。
パネルディスカッションには、前高知県知事の尾﨑正直デジタル政務官も出席。尾﨑政務官は「IoPプロジェクトは当初から、システム開発などの県内関連産業の振興も狙っていた。今後は流通や輸出入などのデータとの連携が重要になってくる。行政からの情報も活用されるべきだ」と指摘した。