大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2026年2月度のテーマは「物価高の影響」。全国の5655社の中小企業経営者を対象に、2月2日~27日にかけて、訪問、またはZoom面談で調査を行った。
全体として景況感については、「現在の業況」(業況DI)がマイナス10.9ポイント(前月差マイナス0.7ポイント)と悪化、「将来の見通し」(将来DI)も2.8ポイント(前月差マイナス1.5ポイント)と悪化した。
■約9割が「物価高の影響あり」、サービス業は価格転嫁に難儀
物価高の影響を「受けている」と回答した企業は、「非常に大きな影響を受けている」(18%)、「大きな影響を受けている」(30%)、「多少影響を受けている」(40%)を合わせて88%と、全体の約9割に及んだ。
総コストの上昇幅については「上昇した」と回答した企業が約9割。影響が大きいコスト項目は、全体では「仕入価格」(62%)が最も多く、次いで「原材料費」(43%)だった。業種別に見ると、製造業では「原材料費」(68%)、建設業では「外注費」(36%)、卸・小売業では「仕入価格」(79%)、サービス業では「人件費」(38%)の割合が他業種に比べ高かった。
価格転嫁については「実施していない」(検討中含む)と回答した企業が約半数だった。業種別でみると、人件費上昇の影響が大きいサービス業で、57%の企業が「価格転嫁できていない」と回答した。
コスト上昇分をどの程度価格に反映できているかについては「ほとんど(または一部しか)価格転嫁できていない(49%未満)」と回答した企業が約半数以上。業種別でみると、特にサービス業で63%の企業が「ほとんど(または一部しか)価格転嫁できていない」と回答した。人件費のコスト増加分を価格に反映することが難しい状況が浮かび上がった。

■9割が「今後も物価は上昇」、行政や金融機関などの支援も期待
今後の物価については、約9割の企業が「上昇する」と予想。上昇幅は、「やや上昇する(5~20%)」が75%、「大幅に上昇する(21%以上)」が13%だった。
上昇を特に懸念しているコストを尋ねると、製造業では「原材料費」(62%)、建設業では「外注費」(38%)、卸・小売業では「仕入価格」(73%)や「輸送・物流費」(32%)、サービス業では「人件費」(43%)や「光熱費」(30%)の上昇が特に懸念されていた。
物価高への対応策(複数回答)については、「価格転嫁」(45%)と「経費削減」(45%)が最多。以下、「新しい収益源の開拓」(22%)、「仕入れ先の見直し」(21%)、「生産性向上のための投資(DX・省力化等)」(12%)と続いた。行政や金融機関などへの支援も期待。内容は、「補助金・助成金の拡充」(56%)が最も多く、以下、「人件費・賃上げに対する支援」(36%)、「金利・返済条件の柔軟化」(27%)、「価格転嫁を支援する制度の拡充」(14%)と続いた。

■経営者ら、「物価高=悪」ではないとの声も
物価高の影響について経営者たちからは、以下のような声が寄せられた。「物価高は今に始まったことではなく、中小企業はみんな我慢している。為替の変動を見越して半年分の発注分の材料は仕入れているが、そのくらいしかできることがない。コスト削減もできることは行うが、限界がある」(製造業・大阪府)、「材料費や仕入価格の上昇頻度が高く、価格転嫁が追いついていない。顧客との値上げ交渉のタイミングの見極めが難しいと感じている」(製造業・山口県)、「どの程度の割合で転嫁すべきなのか、適正価格の見極めが難しい」(小売業・奈良県)など、厳しい状況を訴える声も。
一方で、「物価高によるコスト上昇分を、工程の最適化や作業効率の改善により可能な限り自社で吸収した。ただ企業努力のみでは対応が難しい部分は原価構造を精査したうえで、必要最小限の価格転嫁を行い、事業継続と取引関係維持を両立した」(製造業・福井県)との体験談も。
今後の課題として、「仕入価格に為替が大いに影響するため、今後の動向は注視している。短絡的に“円安が悪”とは思わないが、円安でメリットを受ける分を、デメリットを受ける側に還元するような仕組みが必要」(卸売業・兵庫県)、「“物価高=悪”との風潮は良くない。メリットもあるので、その点を伝えて世間的に理解が進めば上手に付き合う方法も見えてくると思う」(その他・福島県)との声もあった。
■専門家、「実行可能な改善策を積み重ねて」
今回の調査では、中小企業の約9割が物価高の影響を受けており、特に仕入価格・原材料費・人件費の上昇が業況悪化の主要因となっていた。にもかかわらず、5割超の企業が「価格への未転嫁」の状況。中小企業では価格転嫁が十分に進まず、さらに深刻な人手不足も重なって、経営に複合的な負荷がかかっていることがうかがえた。特にサービス業では、人件費の上昇分を価格に反映させることが難しい様子が浮かび上がった。
調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、今後の物価上昇を見据えたとき、
①部分的であっても価格転嫁を継続すること
②仕入先・外注先の見直しや業務の標準化を進めること
③人手不足を補うためのデジタル化・省力化投資を進めること
が重要になると指摘している。
柴本教授は、「中小企業に求められるのは、コスト増を無理に抱え込むことでも、一律に価格へ転嫁することでもなく、自社の強みを生かしながら収益力を着実に立て直していくことです。現状を正確に把握し、実行可能な改善策を一つずつ積み重ねていくことが再成長への鍵となります。必要に応じて、外部の専門家や信頼できる金融機関に相談することも有効でしょう」とアドバイスしている。









