ビジネス

「ゆだねる料理」 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」

 皆さんは買い物に行く時、どんなことを考えていますか? 私にとっては、買い物は出会いの場(笑)なのです。

 今晩と明日の晩は何を作ろうか。冷蔵庫にこれはあったし…、などとあれこれグルグル考えながら、素材を見て回ります。

 とにかく、鮮度の良いものを見つけます。もちろん、中身の裏側までよく見て傷んでいないか。確認しワクワクします。鮮度の良いものとは、野菜ならつやつや生き生きしているもの。発色が良く、今が食べ時、というものです。魚でしたら、目が透き通っているもの。人間にたとえるのであれば疲れていないもの。そのような基準で買い物をしています。

 さて、購入した品物でメニューを考える。ここが難しいですよね。体力気力も関係します(笑)。

 私は野菜や肉や魚に「ゆだねる」料理を作ります。「ゆだねる」とは、全部を託す、自分は口を出さず相手に任せきる、こんな意味があります。料理の場合は、あれこれ複合調味料に頼らないで、素材の味や力強さ、季節を楽しむことです。

 今の季節は魚でしたら、一匹魚(1尾丸のまま)が出てきているので、アジ、イサキ、カマス、イワシ。野菜は、きぬさや、そら豆、アスパラガス、新タマネギなど、茹でただけでおいしいものがたくさんあります。塩焼き、塩茹で。当たり前すぎますが、それを楽しむことができるのがおうちごはんの原点だと思います。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.21からの転載】


料理研究家 藤野嘉子(ふじの・よしこ)1957年生まれ。日本テレビ「キユーピー3 分クッキング」、NHK「きょうの料理」に出演。雑誌や講演会などで料理を指導している。著書多数。