カルチャー

「豊かな老い」とは何か 「最晩年はこう迎えたい」と思わせてくれる病院のケアメソッド

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 あなたは人生の最期をどこで迎えたいだろうか。とある調査データによると約7割が「自宅」と回答したそうだ。「病院などの医療施設」を望んだ人は少数派だったらしいが、実際には病院や介護施設で最期を迎えざるを得ない人が8割近くになるという。

 そんな中、独自のケアメソッドと哲学で利用者に相対し、「最晩年はこう迎えたい」と評判になったのが東京・青梅にある高齢者専門病院「慶友病院」。かつては「4年待ち、400人待ち」といわれるほどの評価を得た(現在は2院となり入院待機期間は解消)病院だ。

 そのケアメソッドを「次世代へ継承」すべく、同病院の現場スタッフや利用者にグループインタビューを試みたのが、老年学研究所所長の黒川由紀子氏。その成果が、『「豊かな老い」を支えるやさしさのケアメソッド』(誠文堂新光社、定価1980円)という書籍として結実した。

 といっても、本書は単に評判のいい病院のノウハウを集めたハウツー本ではない。「死ぬこととどう向き合うか」「介護」「リハビリ」「豊かな最晩年のために」といったテーマに沿って、世話する側と世話される側の生の声を丁寧にすくい取った貴重な記録だ。

 印象的だったのは、「大それたことをするのではなく、やっぱり日々の積み重ねですよね」「ここで人生の最晩年を過ごせてよかったと思ってもらえるように、気概を持ってスタッフみんながやっている」といった言葉。介護や看護に本当に必要なものは何かを物語っている。その一方で、介護される側、人生の最晩年を迎えた人たちがどんなことを考え、どんな行動をとるのかという実例も数多く紹介。それには、本当に考えさせられる。介護や看護にあたる人はもちろん、人生の晩年がそう遠くない人や、そういう年齢の家族を持つ人にもぜひ読んでいただきたい一冊だ。