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年末は芥川・直木賞候補作を読破 講談社からは2作品

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 2024年1月17日に開かれる第170回芥川龍之介賞・直木三十五賞(日本文学振興会)選考会。受賞作品が決まる前に、年末年始の読書はまず候補作だ。たとえば講談社(東京)の2冊。小砂川チト『猿の戴冠式』、加藤シゲアキ『なれのはて』がそれぞれ芥川、直木賞にノミネートされている。

 『猿の戴冠式』(「群像」2023年12月号掲載/2024年1月19日発売予定)は、ある事件以降、引きこもっていたしふみが主人公。テレビのなかに「おねえちゃん」を見つけ動植物園へ。言葉を機械学習させられた類人猿ボノボ”シネノ”と出会い、魂をシンクロさせ交歓していく物語。

 『なれのはて』は、テレビ局員が不本意ながら異動したイベント事業部で、不思議な古い絵に出会い、同僚とともにその絵を使った「たった一枚の展覧会」を実施しようと試みるが、許可を得ようにも作者も来歴も分からず、署名を手がかりに絵の正体を調べていく。たどり着いたのは、1945年8月15日未明に起きた「最後の空襲」の土崎空襲。現代まで続く戦争の傷跡をひもときながら、一枚の絵と人間の宿命を描くミステリーだ。