北海道の動物たちは、ただかわいくて見るものを癒やしてくれるだけでなく、自然界で起きる厳しい現実や、雄大な自然の中にたたずむ神秘的な姿を見せてくれる。人気動物写真家、半田菜摘氏の写真集、『カムイ』(日経ナショナル ジオグラフィック)が発売された。
北海道に存在するたくさんの「カムイ=神」。アイヌ民族の伝統的な信仰では、森羅万象に魂が宿ると考えられ、動物や植物など人間に自然の恵みを与えてくれるもの、火や水、服や食器など生活用具として人間が生きていくのに欠かせないもの、天候や災害など人間の力の及ばないものなどを「カムイ」として敬い、大切にしてきた。写真集では、山の神キムンカムイ(ヒグマ)、沖にいる神レプンカムイ(シャチ)、足の速い神ケマコシネカムイ(キタキツネ)、子守の神アッカムイ(エゾモモンガ)、そして「カムイ」からの恵みとしての獲物ユク(エゾシカ)を含め、数多くのかわいい動物たちの姿をとらえている。
著者は、写真家であると同時に看護師として病棟で勤務。生命と向き合うという共通点を持った仕事をこなす著者だからこそ写し出せる、自然に身を置くことの厳しさ、かわいいだけではない森の中で一生懸命に生きる動物たちのたくましさや、謙虚に命をきらめかせる姿を感じることができる。税込み2970円。