なまはげ、きりたんぽ、温泉など、ユニークな風習や食事、いやされる環境で知られる秋田県。実はそれ以外にも、伝統的なお祭り行事や、歴史ある発酵食品文化、豪雪地帯ならではの雪を使ったアクティビティーなど、観光客をひきつける魅力がたくさん存在する。
今回は秋田で楽しめる冬のアクティビティーを紹介する。気になったら「来てたんせ(来てください)」。
▽リゾートしらかみで冬景色を堪能
JR秋田駅と青森・弘前駅間を五能線、奥羽線経由で結ぶ「リゾートしらかみ」は、特別な快速列車。車両は「青池」「橅」「くまげら」の3種類があり、いずれも窓が大きい仕様となっている。冬の時期は車窓いっぱいの雪景色や日本海が眺められる。県内の移動にも使ってほしい。
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座席は、通常の2人掛けシートのほかに、4人まで座れる半個室のボックスシートもある。すべてのボックスシートから海が見えるため、景色を堪能しながら家族や友人と向かい合って食事や会話を楽しむのにピッタリ。さらに席はフルフラットにもでき、子ども連れや高齢者もくつろぎやすくなっている。ボックスシートはみどりの窓口でのみ販売してきたが、2025年3月15日乗車分から、えきねっとと指定席券売機でも予約や購入ができるようになった。
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車内にあるイベントスペースでは、津軽弁の「語りべ」の実演や、津軽三味線の生演奏など、走行区間によってイベントも実施しており、長時間の移動もあきずに楽しめる。前日までの予約でスイーツやお弁当が受け取れるサービスもある。ほかにも、地元の人たちが工芸品や特産品を直接販売する「ふれあい販売」も行っている。リゾートしらかみは運転日が決まっているため、旅の予定は早めに計画したい。
▽能代駅ホームのリングにシュート
誰もが知っているバスケ漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』。2022年には『THE FIRST SLAM DUNK』という名で映画化され大ヒットを記録した。映画にも登場する山王工業高のモデルとなったのが、能代市にあり何度も全国制覇した古豪・能代工業高(現・能代科学技術高)だといわれている。バスケの聖地・能代のJR能代駅では、4月から11月までの期間限定で、ホームにあるゴールでバスケットシュート体験ができることもあって、国内外から多くのバスケファンが訪れる。
リングは小さい子どもでも届くように低い位置にも設置してある。リゾートしらかみは10分から15分ほど能代駅に停車するため、その間にシュートチャレンジが開催される。シュートを決めた人には秋田杉でできた限定コースターをプレゼント。バスケファンなら一度は訪れたいスポットとなっている。
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▽自然の中を秋田犬マサくんと散歩
東京・渋谷駅のハチ公でも知られる秋田犬は、フワフワな毛並みや愛くるしい表情が特徴。誰もが一度は触れ合いたいと思っているのではないだろうか。一般社団法人ヘルスケアデザイン秋田が三種町のことおか中央公園で実施している秋田犬との散歩プランなら、その夢をかなえられる。
ヘルスケアデザイン秋田は秋田県との共同事業で、健康のために里山や自然を利用した「クアオルト健康ウオーキング」を推進している。自然の中を無理のない範囲で歩くドイツ発祥の健康法だ。一緒に散歩してくれるのは4歳の看板犬マサくん。一人ではなかなか気が進まないウオーキングも、マサくんの手助けがあれば楽しい時間になる。
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三種町を見渡すことができる小高い丘や雪原、やまびこが響くスポットなど、いくつかのポイントを巡って歩く。マサくんが寄り道しそうになった時は、正しいルートに戻してあげよう。約1時間の散歩が終わったら、マサくんとの思い出を振り返られる写真のプレゼントもある。
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穏やかな性格の秋田犬との触れ合いは、小さい子ども連れやファミリー層にも人気で、海外からも多くの客が訪れている。ヘルスケアデザイン秋田の鎌田真広さんは「秋田犬との散歩をきっかけに健康について考えてほしい」と話した。
▽雪国・横手市でミニかまくら作り体験
豪雪地帯の横手市は、3メートル級の巨大なかまくらが有名だが、国登録有形文化財にも登録されている「旧片野家住宅」では、敷地内にかまくらとミニかまくらを作り、雪まつり以外の日でも横手の歴史と雪国の文化を体験できる空間を提供している。また、横手市内ではミニかまくら作り体験をすることもできる(2025年は終了)。積もりたてのふわふわの雪をバケツに入れて踏み固めることを繰り返し、バケツが雪でいっぱいになったらひっくり返す。シャベルで小さな入り口を掘ってろうそくを入れれば完成だ。ポイントは雪の密度を高くバケツに詰めること。初めてだったが、あっという間にミニかまくらを作ることができた。雪が珍しい地域に住んでいる人にとっては特別な体験になるだろう。
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毎年2月15、16日のかまくらに合わせて、地元のボランティア団体「灯り点し隊(あかりともしたい)」が雪まつり会場となっている蛇の崎川原に約3500個のミニかまくらを作る。午後6時になると一つ一つのかまくらに手作業でろうそくがともされ、その幻想的な光景に圧倒されるのは間違いない。
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▽昔ながらの製法を守る石孫本店でみそボール作り
秋田の伝統的な文化の一つが「発酵」だ。長い冬の間に食料を備蓄する必要があったため、発酵食品が発展したといわれている。みそ・しょうゆ醸造所の石孫本店(湯沢市)は1855年から続く老舗で、現在9種類のみそを作っている。材料は米麴(こうじ)、大豆、塩のみ。三つの材料の割合の違いによってうまみと甘みの比率が変わり、さまざまな味のみそができる。
材料の産地にもこだわっていて、米も大豆も秋田県産。塩はミネラルが多くキリッとした秋田県・男鹿半島の塩も使っている。秋田のブランド米「サキホコレ」と秋田県産大豆、男鹿半島の塩とオール秋田で作った「サキホコレ味噌(みそ)」も好評だ。
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石孫本店では醸造蔵内部や作業の見学や、さまざまな体験メニューも受け付けている。体験メニューの中でも人気なのが「みそボール」作りだ。乾燥野菜やだしなどをみそで包むように丸めたもので、お湯を注ぐだけでいつでも簡単に具材入りのみそ汁が食べられる。具材はあられ、ゴマ、オクラなど季節によって異なり、その時期の旬な食材を感じることができる。
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5年ほど前に建物を改築し、体験スペースを作ったことがきっかけでみそボール作り体験がスタートした。社長の石川裕子さんは「材料をそろえるのが面倒だし、毎日みそ汁を作るのは大変だけど、こうやって作ると楽しいし毎日食べたくなる。手軽に体験してほしい」と魅力を語る。作ったみそは2週間ほど日持ちするので、プレゼントやお土産にもぴったりだ。