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原一男監督の最新作『水俣曼荼羅』がDVD-BOXに 水俣で生きる人々の人生と物語を顕した壮大な叙事詩

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 平和ニッポンを過激に撃ち抜いた『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督の最新作『水俣曼荼羅』(2020年/372分/製作・配給:疾走プロダクション/配給協力:風狂映画舎)が2月3日(金)に初回限定版DVD-BOXとして発売される。

 「水俣を忘れてはいけない」―原監督が挑んだのは“水俣”だった。
 日本四大公害病の一つとして知られる水俣病。その補償をめぐっていまだに裁判が続く中、ついに国の患者認定の医学的根拠が覆されたものの、根本的解決には程遠い。原はその現実に20年間、まなざしを注いできた。さながら密教の曼荼羅(まんだら)のように、水俣で生きる人々の人生と物語を顕した壮大に叙事詩ともいえる作品だ。

 第一部「病像論を糾す」—―川上裁判によって初めて、国が患者認定制度の基準としてきた「末梢神経説」が否定され、「脳の中枢神経説」が新たに採用された。しかし、それを実証した熊本大学医学部の浴野教授は孤立無援の立場に追いやられ、国も県も判決を無視、依然として患者切り捨ての方針は変わらなかった。

 第二部「時の堆積」――小児性水俣病患者・生駒さん夫婦の差別を乗り越えて歩んできた道程、胎児性水俣病患者さんとその家族の長年にわたる葛藤、90才になってもなお権力との新たな裁判闘争に賭ける川上さんの、最後の闘いの顚末。

 第三部「悶え神」—―胎児性水俣病患者、坂本しのぶさんの人恋しさと叶わぬ切なさを伝えるセンチメンタル・ジャーニー、患者運動の最前線に立ちながらも生活者としての保身に揺れる生駒さん、長年の闘いの末に最高裁勝利を勝ち取った溝口さんの信じる庶民の力、そして水俣にとって許すとは? 翻る旗に刻まれた怨の行方は? 水俣の魂の再生を希求する、『苦海浄土』の著者である石牟礼道子さんの“悶え神”とは?

 原監督は言う。「私は、ドキュメンタリーを作ることの本義とは、『人間の感情を描くものである』と信じています。感情とは、喜怒哀楽、愛と憎しみであるが、感情を描くことで、それらの感情の中に私たちの自由を抑圧している体制のもつ非人間性や、権力側の非情が露わになってくるのです」。

 「水俣病はメチル水銀中毒だといわれていますが、その水銀がクジラやマグロの体内に取り込まれて、今や地球全体を覆っています。日本の小さな地方都市で発生した水俣病が、今や全世界の人間にとっての大きな問題になっています。ことの大きさを強く強く訴えたいと願っています」と原監督は語った。

 原一男監督は1945年、山口県宇部市生まれ。72年、『さようならCP』でデビュー。74年には『極私的エロス・恋歌 1974』を発表。87年の『ゆきゆきて、神軍』が大ヒットを記録し、世界的に高い評価を得る。94年に『全身小説家』、2017年に『ニッポン国VS泉南石綿村』を発表。2019年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にて、全作品が特集上映された。同年、風狂映画舎を設立し、『れいわ一揆』を発表した。
 DVD-BOXの発売元はキネマ旬報社、販売元はハピネット・メディアマーケティング。
 上映劇場については公式ホームページで。

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