本格的な春を前に一気に暖かくなったこの頃。季節の変わり目は体調管理も難しく、また、冬の間に脂肪がついてしまったので薄着になる季節になって来る前にダイエットに取り組みたい!という人もいるかもしれない。そこで医療や栄養の専門家たちが注目する食品が「きのこ」。きのこの継続摂取で得られる「短鎖脂肪酸」は、医学研究で人の免疫機能を高めことが分かっているという。きのこをおいしく食卓に取り入れる方法を紹介する。
■「短鎖脂肪酸」とは?
「短鎖脂肪酸」は、腸内細菌によって食物繊維から大腸内で作られる代謝物質「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の総称。予防医療や健康医療が専門の循環器内科医、秋津医院(東京都品川区)の秋津壽男院長によると、短鎖脂肪酸が大腸内で増加することで、体へのさまざまなメリットがあるという。その1つが、病原菌やウイルスなどからの感染予防に重要な役割を担うとされている「免疫グロブリンA(IgA)」産出が増えること。また、「酢酸」は、体の脂肪細胞に過剰なエネルギーが吸収されるのをブロックして脂肪の蓄積を抑え、「酪酸」は交感神経に作用して体温を上昇させエネルギー消費を高めることが研究結果で得られている。よって、「短鎖脂肪酸」が体内で増加することで、免疫力アップや、代謝向上によるやせやすい体質が期待できるという。
また、きのこの研究開発・生産・販売まで携わるホクト(長野県長野市)と、腸内細菌叢の機能理解を目的とした研究開発に取り組むメタジェン(山形県鶴岡市)は、共同研究において、きのこの継続摂取が腸内の“短鎖脂肪酸”を増加させるという結果が得られたことを発表している。
■「季節の変わり目風邪」に負けず、ダイエット効果も期待
冬から春への変わり目である3月は、日によって、または1日の中での気温差や気候の変化が激しいこともあり、風邪をひきやすい時期。この「季節の変わり目風邪」に負けないために効果が期待されるのが、「きのこの継続摂取」。ホクトとメタジェンとの共同研究では、1日50gのきのこを4週間摂取した人において、腸内の“短鎖脂肪酸”の増加と“免疫機能”の増強に関わっていることが判明しているという。
また、うまみ成分である「グルタミン酸」と「グアニル酸」が豊富に含まれるきのこは、“うまみ”を豊富に含んでいる。複数の種類のきのこで取っただし汁「きのこ出汁」のうまみは非常に高く、だしを取った後のきのこも料理の“かさ増し”として利用できるため、おいしく食べながらダイエット効果も期待できる。
きのこ食が腸内環境と免疫機能に与える影響を臨床試験によって評価したホクトとメタジェンの共同研究については、科学雑誌「Frontiers in Nutrition」に2022年12月21日付で採択されている。ホクトのホームページで研究結果を公表している。
以上の観点から、管理栄養士・スポーツフードアドバイザーで、ホクトで10年以上、きのこレシピの開発に携わってきた「きのこのプロ」の中村愛香氏が、“きのこをおいしくたくさん取れるレシピ”と、複数のきのこで取る“ハイパーきのこ出汁”の作り方を紹介している。
■「きのこ」をおいしくたくさん取れるレシピ3選
家庭にある定番調味料で手軽に作れる常備菜レシピ。簡単にアレンジレシピも作れ、さまざまな味わいを楽しみながら飽きずにきのこを食べ続けられる。各レシピは、ホクトのホームページでも紹介している。材料は2人分。
大人にも子どもにも大好評な甘辛味で味付けし、さまざまな料理によく合う使いやすい味。卵焼きの具材にもぴったり。
<材料>
ブナシメジ:100g
ブナピー:100g
エリンギ:100g
マイタケ:100g
【A】砂糖:大さじ4
【A】酒:大さじ2
【A】 しょう油:大さじ2
<作り方>
(1)ブナシメジ、ブナピーは石づきを切り、マイタケと共に小房に分ける。
エリンギは食べやすい大きさに切る。
(2)鍋に(1)と【A】を入れて混ぜながら中火にかけ、汁気がなくなるまで加熱する。
濃厚な味噌のコクがきのこになじむ、まろやかな味わい。そのまま食べるもよし、料理に加えるもよしの、使い道色々な常備菜。「味噌きのこ」を使ったアレンジレシピ「味噌きのこの野菜炒め」は、コクとうまみでご飯が進むこと間違いなし!
<材料>
マイタケ:200g
ブナシメジ:100g
しょうが:1片
ごま油:大さじ2
【A】味噌:100g(半量は赤みそがおすすめ)
【A】酒:大さじ2
【A】 みりん:大さじ2
<作り方>
(1)ブナシメジは石づきを切り、マイタケと共に小房に分ける。しょうがはみじん切りにする。
(2)フライパンにごま油を熱し、(1)を入れて炒める。
(3)【A】をよく混ぜ合わせて加え、水気が出てきたら弱めの中火にし、水気がなくなるまで炒め煮する。
ほどよい酸味でさっぱりまろやかな味わい。ピクルスのようにさまざまな用途に使え、食感のよいきのこがたっぷり食べられる。「酢きのこ」入りのタルタルソースを使ったアレンジレシピ「きのこタルタルチキン南蛮」は、コクがありつつさっぱりとした後味。
<材料>
ブナシメジ:200g
エリンギ:200g
オリーブオイル:80g
【A】酢:100ml
【A】コンソメ(顆粒):大さじ2分の1
【A】はちみつ:大さじ1
【A】赤唐辛子:1本
【A】 塩:小さじ2分の1
<作り方>
(1)ブナシメジは石づきを切り、小房に分ける。エリンギは半分の長さにして、5mm幅に切る。
(2)鍋に【A】を入れてひと煮立ちさせ、バットに入れる。
(3)フライパンにオリーブオイルを熱して(1)を入れ、中火でしんなりするまで炒めたら、熱いうちに(2)に加えて混ぜラップでぴったりと覆い漬ける。
■複数のきのこを使い、だしを取ったきのこも活用する「ハイパーきのこ出汁」
うまみたっぷり、出来上がった料理に出汁を取った後のきのこをトッピングすることで、料理の“かさ増し”ができることで食べ過ぎ防止にもつながり、ダイエットも期待できる料理に! ポタージュ・ぶり大根・炊き込みご飯へ・・・アレンジもさまざま。
▼『ハイパーきのこ出汁』の作り方
<材料>
きのこ:100g
水:1000ml
<作り方>
(1)きのこを刻む。
(2)鍋に水ときのこを入れて弱火で煮る。
(3)「きのこ出汁」をザルで濾す。
(4)「きのこ出汁」を使い料理を作る。
(5)最後に『きのこ出汁』を取ったきのこをトッピングしたら「ハイパーきのこ出汁」の完成。
<ポイント>
・きのこは細かく刻むと、さらにうまみが増す
・水から弱火でじわじわ加熱すると、よりうまみが増す