高知県は、77種類のご当地飲料を巡るキャンペーン「口福(こうふく)の土佐 御朱“飲”(ごしゅいん)めぐり」をスタート。「沢渡茶(さわたりちゃ)編」では、仁淀川町沢渡地区のお茶文化と地域を守る人々を紹介した。今回は米ロサンゼルスから仁淀川町に移住し、クラフトビールの製造・販売を始めた「MUKAI CRAFT BREWING」を紹介する。
■水と地域に魅了されLAから移住 ケネス・ムカイ氏
水質日本一にも選ばれる仁淀川の上流にあたる中津川(なかつがわ)。2020年秋、仁淀川町の中津川沿いに湧き水を使ってクラフトビールを製造する「MUKAI CRAFT BREWING」がオープンした。数キロ先は愛媛県との県境の自然豊かな場所だ。
醸造を担当するのは、ケネス・ムカイ氏(以下ケン氏)。ケン氏は、仁淀川町に移住する前は、米ロサンゼルスで化学と物理を教える高校教師で、自家製ビールを作っては、友人や醸造仲間と一緒にビールを楽しむ日々を過ごしていた。
ケン氏が高知県を初めて訪れたのは1995年。仁淀川支流の川の透明度や、流域の自然、そして高知の酒文化に魅了され、毎年のように高知を訪れるようになった。地域の人々との交流も広がり、友人たちから移住を勧められたのが2017年。移住してビールの醸造所を作らないか?との誘いだった。
教師の定年を数年後に迎えるケン氏は、迷いがあったものの、いくつかの場所を下見。現在の場所に移住を決めた。移住までの期間は、ロサンゼルスのビール工場で設備の勉強をしながら、仁淀川町の地元食材を研究。お茶やしょうが、さつまいもを副原料に使ったクラフトビールを繰り返し仕込んでは、レシピを作りあげていった。そして2019年、ケン氏は仁淀川町に移住し「MUKAI CRAFT BREWING」を設立。製造販売免許を取得して、2020年から営業を開始した。
■世界一うまい湧き水と地元食材を使ったクラフトビール
ケン氏が、ビール作りにこの場所を選んだ最大の理由が「湧き水」のおいしさ。一度も枯れたことのない湧き水は、化学教師のケン氏が自身で調べたところ、ロサンゼルスの工場でさまざまなろ過装置を通した水よりも、清らかでミネラルが豊富だったという。さらに、宿泊施設やキャンプ場が近隣にあることもあり、世界一おいしい水を使ったビールを作る決断をした。
仁淀川町の人々も、ケン氏を歓迎。初めてのうたげでは、地域の人々による歌のプレゼントに感動し、今でも深く記憶に残っているという。MUKAI CRAFT BREWINGが製造・販売する「2410(ニ・ヨ・ド)」はさんしょうとしょうが、「17(じゅうなな)」はさつまいも、「439(ヨ・サ・ク)」はお茶、とそれぞれ地元の素材を副原料に使用。これらの副原料は、素材の提案や提供も行う。「89(はちじゅうきゅう)」は仁淀川町の山林に自生する香木「クロモジ」を使用。クロモジは高級ようじや箸にも使われることで有名だが、抗菌や消炎作用により、胃腸の不調や皮膚トラブルを緩和するともいわれている。クロモジは地元の木材会社からの勧めもあり、枝や葉を使った実験を繰り返し商品化。爽やかな森の香りがする「89」は、顧客からも好評で、筆者もおススメの逸品だ。
MUKAI CRAFT BREWINGは、地域の人々と一緒にクラフトビールを作っている。
ケン氏は「水、麦芽、ホップ、酵母、そして地元の農産物を副原料に使うよう、いつもトライしている。おいしい水を使ったビールを通して、大好きな町を元気にしていきたい」と仁淀川町ならではのビール作りへの熱意を語る。
MUKAI CRAFT BREWINGの近くには、宿泊施設やキャンプ場もある。川のせせらぎを聞きながら、ケン氏や地元の皆さんとうまいビールを交わしてみよう。
「口福(こうふく)の土佐 御朱“飲”(ごしゅいん)めぐり」は、7月22日から24年3月3日まで。期間中に参加店舗で対象飲料を購入すると「御朱飲ステッカー」が進呈されるほか、デジタルスタンプラリーに参加することで、抽選で5万円相当の豪華食材が当たる。
※MUKAI CRAFT BREWINGのクラフトビールは、日本の税法上は発泡酒。主原料並びに製造方法はビールと同じ。