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【ローマ・ナポリ・プロヴァンス】忘れられない朝食の思い出

TABIZINE10周年を記念して、ライターそれぞれが自由に綴る旅エッセイ。第5回目は、京都在住のロザンベール葉さん。「旅行の際、“食”は最も重要なテーマですよね。朝食、ランチ、ディナーとそれぞれに魅力がありますが、10周年に寄せての今回は、朝食にフォーカスしたいと思います。シンプルな中に、その土地の要素がたっぷり詰まっている朝食。特に忘れられない、イタリアのローマとナポリ、フランス・プロヴァンスの思い出をお届けします」
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※画像はイメージです(以下同)

【ローマ】バールで現地の人々とともに味わう
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ローマで滞在した宿は、下町のTestaccio(テスタッチョ)という界隈にありました。滞在中は1階にあるBar(バール)で朝食をいただくスタイルで、オレンジジュースと好みの菓子パン、コーヒーなどの温かいドリンクを選べます。

毎朝バールに下りていくと、出勤前や朝のひとときを過ごしに訪れる地元の人々でにぎわっていました。

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カウンターでエスプレッソをクイッと一気に飲み干し、そそくさと出かける人、近所の人たちとのおしゃべりを楽しみに集う年配の人たち。ここに来れば知り合いに会える、顔なじみのバリスタがいつもいるというバールは、地域の人にとっては安心感を与えてくれるかけがえのない存在なのでしょう。

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毎朝迷いながら菓子パンを選び、カプチーノをすすりつつ人々の様子を見ていると、この地に住む人たちの普段着の暮らしが垣間見え想像力がふくらみます。

このおしゃれな女性はどこかのブランド店で働いているのかな、このおばあさんは一人暮らしでいつもの仲間に会いに来たんだな、などなど。特にイタリア人の男性はさすがに伊達男が多いので、ファッションチェックも楽しみです。

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そしてカウンターの中で働くバリスタたちが、「ボンジョルノ!」に始まり常連客と親しげに話し出し、「いつもの」1杯を目の前にサービス。話しながらも無駄のない動きできびきびと働く姿が様になり、プロ意識を感じさせます。マシンでコーヒーを入れたり、カップが奏でる音が、朝のバールにリズム感を添えています。

人が集うこの活気が、朝からみんなに元気を与えてくれる。こんなバールが家の近くにあれば、気の向いた時に立ち寄れるのに、とうらやましくてなりません。

【プロヴァンス】豊かな自然の中で手作りの朝食を
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バカンス大国のフランスでも、南仏プロヴァンスといえば憧れのバカンス地。その中でも自然公園地帯のリュベロン地方は、やわらかな光と自然が織りなす景色が多くの芸術家を魅了するほど美しい地域です。

そこで出会ったプロヴァンス地方の邸宅・Bastide(バスティッド)。バカンス文化が発達しているフランスでは、日本人にとっては贅沢に思える宿でも、滞在した当時(2019年)で円にすると一人4,000円(1泊朝食付き)ほどで宿泊できました。フランスでも特別に良心的な宿だったと思います。

ご家族で営まれていましたが(現在は閉館)、マダム(とはいっても40歳代の若々しく美しい女性)が作る朝食は、決して豪華ではないけれど、洗練されている上に心が込められていて格別でした。それが楽しみで3年続けて通ったほど。

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部屋数は多くはなく、他のゲストと一緒にプロヴァンスの豊かな自然を望めるテラスで朝食をとりました。毎朝異なるニュアンスのある色合いのテーブルと椅子がコーディネートされ、テーブルの上には森のように広大な庭で採った木の実や野草が飾られています。

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©︎Yo Rosinberg

そして、マダム手作りの焼菓子は、マフィンやビスコッティなど毎朝異なるというサービスのきめ細やかさ。地元産のフルーツを使った手作りのジャムやフルーツのサラダ、ジュースも用意されています。シックなテーブルセッティングと、手作りの素朴な味わいとが絶妙なバランス。

カフェオレを味わいながら、気さくなマダムとご主人、同席したご家族と話すひとときも、アットホームで心地のよいものでした。観光スポットやお店の情報なども朝食時に教えていただきます。寝起きで頭がぼーっとしながらも、宿の夫妻や同席する人たちと交流していると、少しずつ心身が覚醒されていきます。

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豊かな自然の中で楽しむ土地のものを活かした手作りの朝食、そして同席した人々との交流。無理のない範囲での心を込めたおもてなしは、真の豊かさを知り尽くした愛情あふれる夫妻ならではのものでした。その感性は、美しい自然に恵まれたプロヴァンスに育まれたものだと思わずにはいられません。

【ナポリ】街のカフェテラスでスフォリアテッラ
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「ナポリを見てから死ね」といわれるように、ヴェスヴィオ山を背景に美しい海岸線が続く景色で知られるナポリ。南イタリア最大の都市であり、周辺には古代都市ポンペイや風光明媚なカプリ島があります。

街中は海岸沿いとはうってかわって、アジアのどこかの都市に迷い込んだかのようなカオス状態。洗濯物がはためく光景が、人間味あふれる南イタリアらしさを物語っています。

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そんなナポリの下町の旧市街に「スパッカ・ナポリ」(ナポリを真っぷたつに割る)と呼ばれる、細くまっすぐな路地が貫く地域があります。

滞在したゲストハウスがその界隈にあり、朝食は付いてなかったので、毎朝広場にある老舗パティスリー「Scaturchio(スカトゥルキオ)」のテラスまで出かけました。ナポリ地方の銘菓というsfogliatella(スフォリアテッラ)の名店です。

■Scaturchio:https://scaturchio.it/

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スフォリアテッラとは「ひだを何枚も重ねた」という意味を持ち、貝殻をかたどった何層ものパイ生地の中に、リコッタチーズ、カスタードクリーム、アーモンドクリームなどを入れて焼き上げたもの。

何層ものパイが重なっているため、パリパリとした食感が特徴で、中に入ったなめらかな舌触りのクリームとの相性が抜群! これが、ナポリ特有の濃厚なカプチーノとよく合うのです。

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テラス席では、バギーで赤ちゃんを連れた女性が、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいました。サングラスを頭にのせ、コーヒーカップ片手に過ごすひとときは、子育てに忙しい最中の大切な憩いの時間だったのでしょう。その美しいイタリア女性の優雅な姿に成熟した大人の余裕を感じ、思わず見惚れてしまいました。

やんちゃなナポリっ子たちが駆け回り、大人たちも大きな声でおしゃべりを楽しむ、陽気な南イタリア人の気性を体現したかのようなスパッカ・ナポリ。

その界隈にある広場のテラス席で、毎朝スフォリアテッラを頬ばりながら現地の日常を垣間見るのが何より楽しみでした。その光景は、ナポリの素顔を感じさせてくれたような気がします。

[Photos by Yo Rosinberg & Shutterstock.com]
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