プロが考えるコロナ下を見据えた不動産の売り時、買い時

マンション売り時

 新型コロナウイルスの感染拡大は、不動産の市場にも少なからず影響を与えています。
 不動産の売買を考えていた方の中には、どのタイミングで手続きを進めればよいか迷っているという人もいらっしゃるでしょう。
 この文章では、コロナ下における不動産の売り時や買い時についてお伝えしていきます。

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不動産市況を確認しよう

 コロナによる不動産市況への影響については、現時点では確実なことはいえません。
 経済ショックが起こったとしても人が住む場所は必要なので、特に居住用物件については影響が少ないといわれています。ただ、コロナ禍による経営悪化に伴う企業倒産、雇用解雇、あるいは減給といったことで、家計の収入が減ってしまえば居住用物件にも影響が出てくるでしょう。不動産の売買を考えているといった方は、インターネットで確認できる不動産に関するレポートを見るなどして、最新の市況を定期的に確認しておくことをおすすめします。

居住用物件の影響は限定的

 先ほど言及しましたが、居住用物件については経済ショックがあっても住む場所は必要とされるため、影響は限定的であることが多いようです。実際にデータを見てみても、現段階では持ち直していることが見て取れます。

2020年7~9月期は前年並みに回復

 取引情報などの集まる東日本レインズのデータによると、首都圏の中古マンションの成約件数は2020年4~6月期に前年同期と比べ約3割減となってしまいましたが、7~9月期には1.4%増と持ち直しています。国内で政府による緊急事態宣言が出たことで、一時的に市場が冷え込んだものの、その後は活発に取引がなされています。なお、首都圏の中古戸建についても同様の傾向が見られます。2020年4~6月期の成約件数は前年同期と比べ2割減ほどとなりましたが、7~9月期には1割弱増えています。
 その他、東日本レインズのデータでは札幌市と仙台市のものも確認できます。それによりますと、札幌市の中古マンションは2020年4~6月期が前年同期比3割強減でしたが、7~9月期は1割減でした。仙台市の中古マンションも、4~6月期が4割弱減な一方、7~9月期1割弱減と、いずれも減少幅が縮小しています。
 中古戸建については、札幌市で4~6月期が1割減、7~9月期がほぼ横ばい、仙台市でも4~6月期が4割減で、7~9月期は2割減となっています。

  

中古マンション 

中古戸建 

  

4~6月期 

7~9月期 

4~6月期 

7~9月期 

首都圏 

約3割減 

微増 

約2割減 

約1割弱増 

札幌市 

約3割強減 

約1割減 

約4割弱減 

約1割弱減 

仙台市 

約1割強減 

ほぼ横ばい 

約4割減 

約2割減 

※東日本レインズ マーケットウォッチ

2020年9月度中古マンション天気図

 不動産に関するレポートなどが見られる東京カンテイでは、毎月都道府県ごとに市況を見られる価格天気図を発行しています。
 2020年9月の中古マンション価格図を見てみると、「晴」の地域は前月の16から17に増加、逆に「雨」の地域は6から4に減少しています。ただし、「曇」は11から13へ、「小雨」は6から7へ増加という結果です。2020年5月の「晴」の数が8カ所だったのでおおむね改善傾向にあることが分かります。なお、5月でも「雨」の地域は5カ所だったため、コロナ禍においても全国的に急激な悪化とまではなっていないと考えられます。

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月

9 14 15 14 8 9 11 16 17

薄日

19 10 13 10 13 12 12 8 6

11 14 7 13 13 15 13 11 13

小雨

6 6 9 7 8 7 8 6 7

2 3 3 3 5 4 3 6 4

※東京カンテイ 中古マンション価格天気図

店舗やオフィスについては影響が大きい

 一方、経済ショックが起こると店舗やオフィスに与える影響は大きいとされています。
 特にコロナ禍においては飲食店などへの影響が目立ち、店舗関係への影響は小さくないことが予想されます。また、オフィスにおいてもリモートワークを導入する企業が増えることにより、より安い家賃のオフィスへ移転するところが増えることも想定されます。
 とはいえ、データを見てみるとまだそこまで大きな影響は出ていないことが分かります。
 ザイマックス不動産総合研究所のオフィスマーケットレポートによると、東京23区のオフィスにおける空室率は2020年1~3月期の0.71%から4~6月期の1.01%と0.30%上昇しているものの、現時点では小さな影響で踏みとどまっていると見ることもできるでしょう。
 今後の市況などデータの発表が待たれます。

図

 

参考:ザイマックス不動産総合研究所 オフィスマーケットレポート

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2020年までの不動産市況の動向

 ここまで2020年の不動産市況を中心に見てきましたが、2020年より以前の不動産市況はどうだったのでしょうか?

インバウンド需要や都市再開発による地価上昇

 2020年までの不動産市況は、アベノミクスによる外国為替の円安誘導や、東京五輪・パラリンピック開催に向けた都市の再開発により、都心部を中心に継続して上昇していました。円安によりインバウンド(訪日外国人客)需要が増え、実際に街に外国人観光客が増えたと感じることも多かったでしょう。こうした影響により、東京都・浅草や沖縄県、北海道といった観光地の地価が大きく上昇しています。

首都圏で新築マンション成約戸数を中古マンション供給戸数が上回る

 上記通り、インバウンド需要や都市の再開発により都心部の不動産市況は上昇傾向が続きました。特に首都圏は大きく上昇し、日本においては珍しい、ある現象がおきました。
 新築マンションの供給戸数を、中古マンションの成約戸数が上回ったのです。これは、新築マンションの価格が一般の人の手には届きにくい価格まで上昇したことが要因だといえます。

公的価格も確認しておこう

 不動産市況を把握するにあたり、情報を入手しやすいのが公示地価や地価調査、路線価などの公的な価格です。不動産の売り時や買い時を判断する際には、こうした価格についても調べておくとよいでしょう。

公示地価について

 公示地価は国土交通省が取引の参考にするために調査、公表する不動産の価格に関する指標です。毎年1月1日時点の価格について3月中旬ごろ発表されます。
 2020年に発表された公示地価は、全国の全用途平均が5年連続でプラスという結果でした。まだコロナ禍による影響が大きく出ていなかったころの調査で、2020年以前の不動産価格の上昇傾向を反映したものだといえるでしょう。
 先述の通り、インバウンド需要が大きかったことから北海道や沖縄県など観光地として有名なエリアが地価上昇率の上位を占めています。

地価調査について

 地価調査は各都道府県により調査・公表されるもので、毎年7月1日時点のものを9月末ごろに発表します。不動産の取引の参考にするための価格であるなど、公示地価と似た性質を持ちます。
 こちらは7月1日時点の地価ということもあり、コロナ禍による影響を多少反映し、全国の全用途平均は0.6%の下落と2017年以来3年ぶりの下落でした。なお、用途別にみると全国の住宅地が前年比0.6%減だったのに対し、商業地は2.0%減と商業地の下落幅が大きいことが分かります。
 なお、地価調査は1年間の地価の動きを反映するもので、前半(2019年7月1日~2020年1月1日)は好調だったことを考えると、実態はもう少し悪いのではないか、と予想することもできます。

路線価について

 路線価は主に相続税や贈与税の課税のため国税庁が調査・公表するもので、毎年1月1日時点の地価を7月1日に発表します。
 1月1日時点の地価を7月1日に公表するためタイムラグがあり、現実では新型コロナウイルスによる影響が各地で表れているのにも関わらず、公表結果は平均でプラスという実態とはかけ離れた内容だったことが話題となりました。ただ、公表にあたり今後の状況を見ながら必要に応じて修正する可能性があるという、国税庁による異例のコメントもなされています。
 なお、昨年までインバウンド需要により大きく地価を伸ばしたエリアでは、コロナ禍により観光客が来ないことで影響が出て、実態と地価の乖離(かいり)が特に大きくなってしまっています。

新型コロナウイルスにより不動産の常識が変わる可能性がある

 不動産の売り時や買い時を判断する際には、新型コロナウイルスにより不動産の常識が変わってしまうかもしれない点も考慮しておくとよいでしょう。

リモートワークで郊外の不動産が人気に?

 不動産は、都心部を中心に利便性のいい駅からの徒歩距離が近いほど、価値が高い傾向にあります。しかし、新型コロナウイルスによりリモートワークを実施する企業で働く人にとっては通勤という意味では駅からの距離を気にする必要はなくなります。
 このため、コロナ禍を理由に郊外に引っ越す人が増えたといったことをニュースなどで耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 今後、新型コロナウイルスが落ち着き、企業がリモートワークから通常勤務に戻す可能性もありますが、一方で新型コロナウイルスが落ち着いた後もリモートワークが定着した場合、これまでとは違い、郊外の不動産の人気が高まる可能性もあります。
 現段階ではあくまでも可能性の話ですが、「駅近の不動産の売却や購入を考えている方」や「郊外の不動産の売却を考えている方」は今後の動向次第では情勢が大きく変わる可能性もあるため、市況をよくチェックしておくとよいでしょう。

在宅ワークが増えて住宅需要が増加?

 また、リモートワークが増えることによる影響の一つとして、家にいる時間が増えることで家にお金をかける人が増えるということも考えられるでしょう。
 特に戸建住宅は郊外に土地を求めて購入する方も多いと予想されます。このため、郊外での戸建購入を考えている方は早めに動いた方がよいかもしれません。
 とはいえ、新型コロナウイルスによる景気の低迷を大きく超えるほど、住宅の需要が増えるとは考えづらいともいえます。

今後不動産市場に影響が及ぶ可能性のある出来事

 新型コロナウイルスによる影響以外で、今後、不動産市況に影響が及ぶ可能性のある出来事がいくつかあります。ここでは、そのうち有名なものを三つご紹介します。

2022年:生産緑地問題

 一つ目は生産緑地法により生産緑地に指定された土地の期限が、2022年に一斉に切れてしまうという問題です。これにより、土地が一斉に売りに出されて、土地の価格が下落してしまうことが予想されています。
 これについては、以前から問題が指摘されており、法改正をすることで期限の延長ができるようになるなどといわれています。
 とはいえ、延長にも条件があることなどから、この生産緑地問題を完全に回避できる状況にはありません。
 新型コロナウイルスによる影響と生産緑地問題がダブルで悪影響を及ぼすことで、地価が大きく下がる要因となることも考えられます。

2025年:大阪・関西万博開催 

 2025年には大阪・関西万博が開催されます。大阪・関西万博の開催により、世界各国から観光客が日本に訪れることが予想され、また万博開催に向けた都市再開発が進むことで、不動産市場にプラスの影響が及ぶことが考えられます。
 主に万博の開催される大阪周辺に大きな影響がありますが、不動産全体の市況にも多少のプラスの影響は期待できるでしょう。

2027年:リニア中央新幹線開業

 これによりリニア中央新幹線の駅が新設されるエリアにおいては、駅周辺の開発が進められ、それにより雇用が生まれるなどして不動産市況にもプラスの影響が見込まれます。
 こちらも、駅が新設されるエリアを中心とした影響ではありますが、不動産全体にプラスの影響を期待できるでしょう。

まとめ

 不動産の売り時や買い時を判断するにあたり、不動産市況に関する各種データを見ることで判断するとよいということをお伝えしました。
 新型コロナウイルスによる影響がどの程度のものになるか、現段階でははっきりとしたことはいえません。直近で不動産の売買を考えている方は、今回ご紹介した各種データなど参考にするとよいでしょう。

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