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木管楽器の製造時に選別されて残る木材を鍵盤の原料に活用したヤマハの新しい電子ピアノ「TORCH T01(トーチ・ティーゼロワン)」が2月18日、報道陣に披露された。楽器製造に欠かせない希少木材の有効活用を追求した特別な電子ピアノで販売数は限定20台。価格は99万円。
横浜市内で開かれた電子ピアノの披露記者会見で、ヤマハ(浜松市)の山浦敦社長は「クラリネットなどの木管楽器やピアノ、スピーカーなど音楽、楽器、音響機器に木は欠かせない。大切な木と共存して音楽のトーチ(ともしび、たいまつ)を絶やさずに100年先の未来を明るく照らすことはヤマハの重要な使命だ」と述べ、希少材の育成保全や有効活用をはじめとした持続可能な楽器づくりの重要性を強調した。
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トーチ・ティーゼロワンの鍵盤の主要原料は、東アフリカ産の希少木材グラナディラ。クラリネットなどの木管楽器製造時に使われずに残ってしまうグラナディラを粉に加工し少量の樹脂を混ぜて鍵盤を作った。グラナディラは「アフリカン・ブラックウッド」とも呼ばれる、中心部分が黒色の木。このため鍵盤は、職人が丹念に仕上げた“高級墨”のような、自然な深い黒色に統一されている。弾き心地も、木の特性である吸湿性が指を滑りにくくして快適さを実現できた、という。
記者会見では、ソウル・バンドWONK(ウォンク)のキーボード奏者で、人気バンドのプロデュースでも活躍する音楽家の江﨑文武さんが、トーチ・ティーゼロワンを繊細なタッチで弾き、音楽と楽器の未来を照らすトーチをイメージした優美な即興曲を披露した。
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江﨑文武さんは「木の良い香りがした。またヤマハのロゴが塗装やシールでなく木材にきちんと彫ってあるなど細部が行き届いていて、長く使うと愛着がわくピアノになると思う」と感想を述べた。
また、塗装が剥げて地の合金が見える自身の古いフィルムカメラや約10年愛用する色が変化して黒くなった銅製の茶筒を例に挙げて「このカメラや茶筒を“育っている”として私は愛(め)でている。20台しかないこのピアノの黒い鍵盤も年齢を重ねて味わい深いものに育ち、愛でられるものになってほしい。持続可能性の実現には、このような感覚(時を重ねた育ちを愛することができる精神態度)を持つことも必要ではないか」と話した。
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トーチ・ティーゼロワンは抽選で販売。3月31日まで購入申し込みを受け付け、4月中旬に購入当選者を発表する。購入申し込み・詳細はヤマハホームページ。
トーチ・ティーゼロワンの実物は3月30日まで、ヤマハ銀座店(東京都中央区)▽Yamaha Sound Crossing Shibuya(東京都渋谷区)▽ヤマハミュージック 横浜みなとみらい(横浜市)▽ヤマハミュージック名古屋店(名古屋市)▽ヤマハミュージック大阪なんば店(大阪市)の5拠点で展示する。代官山 蔦屋書店(東京都渋谷区)でも3月1~31日、展示する。