ライフスタイル

内臓脂肪減らす飲み薬を4月に発売 生活習慣改善や薬剤師の指導が条件

アライ18カプセル入り(左)と90カプセル入り

 世界肥満デーの3月4日、大正製薬は「日本初となる内臓脂肪・腹囲減少薬alli(アライ)を4月8日に発売する」と発表した。食事に含まれる脂肪の分解、吸収を抑え、便と一緒に排出する仕組み。薬局・薬店で薬剤師の服薬指導を受けて購入する「要指導医薬品」で、健康障害を合併していないことや生活習慣改善に取り組んでいることなどが使用の条件になっている。

▽食事中の脂肪25%を排出

 肥満は日本人の場合、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が25以上の場合を指し、国内では男性の約3割、女性の約2割が該当する。4日の発表会で横手幸太郎千葉大教授(日本肥満学会理事長)は「肥満は世界的に万病の元と考えられており、中でも内臓の回りにつく内臓脂肪の蓄積が、代謝性の生活習慣病の合併を増やすことが分かっている」と内臓脂肪対策の重要性を指摘。その上で「日本肥満学会は食事療法、運動療法、それを維持する行動療法を提唱しているが、治療には限界があった」と新薬登場の背景を説明した。

通常の脂肪吸収(左)とアライによる吸収抑制の仕組み

 

 アライは有効成分オルリスタットを60ミリグラム含有するカプセル錠で、1日3回、食事中か食後1時間以内に服用。膵臓(すいぞう)から分泌される脂肪分解酵素リパーゼの活性を阻害し、食事で摂取した脂肪の約25%を、体内に吸収せずに便と一緒に排出する。臨床試験では飲み始めた4週間後から効果が確認され、長期投与試験では52週の服用で内臓脂肪の面積が21.52%減少、腹囲も4.89%減ったという。大正製薬は「成分自体は体内にほぼ吸収されない。服用と併せて食事、運動などの生活習慣を改善することで内臓脂肪が減少し、結果として腹囲の減少へと導くことが期待できる」としている。

 一方で、便が油っぽくなる、おならをすると便が漏れる、下痢、腹痛といった消化器症状の副作用が440例中180例(40.9%)あった。同社は脂肪分の多い食事は控え、慣れるまではおむつや便漏れパッドを使うよう呼びかけている。

 オルリスタットは1997年以降、190カ国以上で医師が処方する「医薬用医薬品」や処方箋のいらない「OTC医薬品」として承認され、4900万人以上が使用していると推定される。アライという名称は「寄り添う、同盟、味方などを意味する英語の『ally』にちなんでいる。読むときは『ラ』にアクセントを置いている」(同社)という。

▽自分の努力で肥満症予防を

 アライ服用の対象となるのは①18歳以上②へその高さの腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上③食事や運動など生活習慣改善の取り組みを行っている-人。肥満に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの健康障害を合併している「肥満症」の人や、BMI35以上の「高度肥満症」の人は医療の対象であり、アライは使えない。また、購入を希望する1カ月前から使用中にかけ、生活習慣改善の取り組みと体重、腹囲を記録することも条件になっている。

アライ服用の対象

 薬局や薬店で購入でき、希望小売価格は18カプセル(6日分)2530円、90カプセル(30日分)8800円。要指導医薬品に指定されているため、薬剤師による対面販売と情報提供、販売記録が義務付けられている。ネット販売も認められていない。大正製薬は薬剤師約2万6000人にeーラーニング研修を実施、販売店向けにチェックリストや説明資料を用意し、消費者には生活記録を付けたり商品情報が得られたりする専用アプリをリリースするなどして、適正販売を目指すとしている。

 横手氏は「内臓脂肪を放置して肥満症になる前に食事、運動療法をやり、効果が不十分な場合に服用して自分の努力で肥満症を予防しようというコンセプト」とアライの意義を解説。健康障害のある人が購入しないよう薬局と医療機関の連携が必要であることや、内臓脂肪がたまっていない人がやせ薬として使わないようなサポートを提唱した。

発表会で行われた模擬薬局での購入デモンストレーション