カルチャー

熱い!「桃鉄ワールド」体験会イベント 夏休み中の小学生、国旗を通じ世界を知る

「桃鉄ワールド」を楽しむ小学生

 「あっ、サイコロで6が出た!」「よーし、お金がもらえる、エンジェル登場だ!」「到着した駅の不動産物件を買おうかな、どうしようかな」「3マス進み、いいカードをゲット~」――。熱戦を繰り広げるパリ五輪の声援に負けないほどの熱を帯びた子どもたちの声が教室に飛び交ったのは、東京都小金井市の東京学芸大学付属小金井小学校の一室。夏休み中の午後、同校1~6年生の計33人の児童が保護者とともに集まった。

 コナミデジタルエンタテインメントが人気ゲーム「桃太郎電鉄ワールド~地球は希望でまわっている!~」(ⓒさくまあきら、ⓒKonami Digital Entertainment 以下、桃鉄ワールド)を子どもたちにプレーしてもらい、クイズも挟みながら、ゲームを通じて国旗を楽しく学び、世界の地理や歴史をより知ってもらおうと企画したイベントだ。

児童らを前にイベントの狙いを説明するコナミデジタルエンタテインメントの担当者
 
国旗クイズに答える児童
 

▼「平和で自由な世界が舞台です」

 この日は、児童4人で1チームを組み、テレビのほかコントローラーが1人1台用意された。画面上に出てくるサイコロの目に従ってコマを進め、駅に止まると旗が表示される。自分の番になったらサイコロを振り、移動しながら不動産の物件などを買い進め、最終的に総資産の1位を目指すゲーム。

 プレーを始める前に、コナミデジタルエンタテインメントの担当者は「桃鉄ワールドを遊べば、国旗を覚えることができる」「気になった旗をピックアップして、今日の感想をみんなに伝えよう」などと児童たちに呼びかけた。さらに、ゲームが終わった後には、踏破した駅や到着した目的地の駅などの達成状況を振り返って確認できる、メニューの「マイワールド」をぜひ活用してほしいと付け加えた。

 担当者が「国旗クイズ」の紙を配ると、児童らは鉛筆を握りしめながら「インドの国旗はどれでしょう?」などの質問に対し、四つの国旗から選んだ。「どれかな?」「どれだと思う?」という会話がグループ内で自然に生まれ、上級生が「この国の国旗はこれだと思うよ」などと教えていた。回答後はクイズの答えと旗の解説が書かれたシートをもらい、理解を深めた。

 コントローラーを握りしめている多くの児童は、待ち切れない様子。ソフトのデータを読み込んでいる際には「本作は地球上のすべての都市が線路や空路でつながっている平和で自由な世界が舞台です。プレイヤーはその路線をつかってよりよい未来を創ろうとしている電鉄会社の社長さんたちです」とのメッセージが現れた。

 同社の担当者によると、これは、桃鉄シリーズの原作者であるさくまあきらさんのメッセージだという。今回の作品に限らず、さくまさんは「毎日が桃太郎電鉄のような平和な日々でありますように!」と願っており、その思いが先ほどの文章になったという。

画面に示された4択から、どれが正解かを考える児童
 
トルコ国旗の説明が表示された画面
 

▼「三つの色の組み合わせがきれい」

 さぁ、プレー開始。画面上のサイコロの目が出て、駅に着くたびに、歓声や残念な声が教室内に響く。毎月持ち金が増えるエンジェルカードが入手できると歓声が上がり、桃鉄シリーズに登場するキャラクター「貧乏神」(ボンビー)が登場すると「あー、あー」という嘆きの声が聞かれた。

 約1時間半のプレー時間が終わり、気になった国旗について、各グループの代表がそれぞれ発表した。

 「イタリアの国旗がすてきだと思いました。緑、白、赤の三つの色の組み合わせで、とてもきれいだと感じたからです」「ブータンの国旗は龍が書かれていて、とてもかっこいいと思いました」「アメリカの国旗にある星の数が州の数だということが分かりました」「赤色のネパールの国旗は、形が不思議だと感じました」「スイスの国旗は形がかっこいい。桃鉄は初めてやりましたが、とても楽しかった」などと、しっかりとした口調で発表した。

 その後、国旗クイズの2回目を実施し、本日の感想などを書くアンケートを記入していた。担当者が「今日、参加してくれた全員にプレゼントとして桃鉄ワールドのソフトを1本プレゼントしたいと思います」と告げると、この日一番の歓声が教室内に上がった。

 保護者の一人は「実は、私が参加の申し込みをしました。子どもが以前、学校で桃鉄シリーズに触れる機会があり興味を持ちました。このソフトは学習につながるという手応えを今日のイベントを通じ感じることができました」と感想を述べた。

プレーに熱中する児童
 
インタビューに答える小池教諭
 

▼「コミュケーションツール」として活用

 イベント終了後、東京学芸大学付属小金井小学校の小池翔太教諭に話を聞くことができた。小池教諭は、「ゲーミフィケーション」というゲームの社会的な活用や教育的な活用についてどのように実践的に進めるのかを研究している。

 「教室内にゲーム機を持ち込んで、希望する子どもたちを招いたイベントは初めてでした」とした上で「日本全国を舞台にした『桃鉄の教育版』があり、その教材づくりなどを手伝いました」と語った。校内でも少しずつ普及していきたいとの考えで、普段は、児童一人一人に貸与しているパソコンから、ID、パスワードを入力してアクセスできるようにしているという。

 小池教諭は桃鉄について「ちょっとした小テストの空き時間や席替えをしたときにやるとか、開発者のさくまあきらさんが言われるように、桃鉄をコミュケーションツールとして活用するのもいいと思います」と指摘する。「今日の子どもたちの様子を見て、ゲームプレーを通じ、児童同士の会話が活性化することをあらためて感じた」からだという。

 さらに、小池教諭は「すごろくなど、ボードゲームといわれるものはもともと(対戦者同士の)コミュニケーションがベースになります。実は、多くの小学校で嫌いな教科は社会科という調査結果があります。社会科が始まる3年生の少し前の段階から、難しい地名があって嫌いにならないようにするとか、苦手意識が出ないようにするとかを目標に(ゲームを通じて)少しの時間でも工夫しながら活用していってもよいのではないか」と強調した。