全国的なコメ不足と価格高騰の影響が、せんべいなどコメを原料とする菓子にも及んでいる。帝国データバンク(東京)の9月30日までの統計によると、コメを原料にせんべいやあられ、おかきなどを製造する米菓製造業の倒産(負債1000万円以上、法的整理)や休廃業解散は、9月までに計11件発生した。2022年通年の件数(5件)を上回る増加ペースで、過去最多となる可能性がある。
米菓メーカーでは、米菓需要の低迷と、原料となる国産米の価格高騰によるコストアップの狭間で厳しい経営環境が続いている。総務省の調査によると、せんべい(100g)の小売価格は2024年平均で149円。2020年比で2割超上昇し、過去10年で最高値を記録した。大手米菓メーカーを中心に、製造コストの上昇による値上げの実施が影響したとみられる。
一方、せんべいへの家計支出は2020年比17%増にとどまり、購入枚数も推計で家計当たり月2枚分(同7%)減少。近年はお中元・お歳暮控えの傾向や、家計の節約志向で買い控えや他ジャンルの菓子への需要が流出したことなども要因とみられる。
足元では原料となる国産米の価格高騰に加え、安価な米国産など輸入米も円安で価格が上昇。生産現場における人手不足も重なり製造コストの上昇が続き、値上げしなければ経営が成り立たず、さらに、せんべい価格が上昇しても消費力が追い付いていないのが現状だ。
帝国バンクでは、今後も、原料米の価格高騰などコスト高の局面が続くとみられるものの、中小米菓メーカーでは、消費量拡大の糸口が見えない中での単純な値上げは難しいと分析。これまでの“硬い”食感のせんべいから、“ふんわり”とした米菓の開発でファミリー層の支持を取り込むなど、消費者の生活スタイルに合わせた商品の提供などが、今後の米菓メーカーの成否を左右する可能性があると見ている。