1月も終わりに近づいていますが、まさに今が冬本番。東京都内でも、最高気温一桁台という日もありますね。これだけ寒いと出かけるのもおっくうになりますが、少し遠出をすれば、冬にしか見られない雪景色を楽しむことができます。体が芯まで冷えるこの季節は、温泉との相性もぴったりですね。雪を堪能しつつ、温泉にも入ることができれば、最高です。
今回は、長野県の浅間山登山口にある「天狗温泉 浅間山荘」をご紹介します。こちらは雪山にたたずむ一軒宿。トマトジュースのような赤褐色の温泉を雪景色とともに、味わうことができます。
「天狗温泉 浅間山荘」があるのは、長野県小諸市の浅間山麓。標高1400メートルの高地に、ポツンとたたずむ一軒宿です。浅間山の登山口でもあり、春から秋にかけては登山客でにぎわい、今の季節は深い白銀の世界を堪能することができます。浅間山荘の建物は、木のぬくもりを感じる近代的なつくり。この季節の雪景色によく映えます。
ちなみに、あの有名な「あさま山荘(事件)」とはまったく別物です。こちらは、昭和32年に登山客向けの山荘として歴史がスタートし、平成7年から自然湧出の源泉を引き込むことで温泉宿となっています。
お風呂は男女別で、1階に日帰り入浴もできる「岳(がく)」、2階に宿泊者専用でオープンテラス併設の「空(そら)」と、2カ所あります。それぞれ内湯のみですが、大きく取られた窓からは豊かな山々を望み、露天風呂のように明るく開放的。この時季は雪景色を楽しむことができます。
温泉の泉質は、単純鉄(II)冷鉱泉[炭酸水素塩型]。源泉温度が約8度と、とても冷たいため、ボイラーで加温を行い、適温にして湯船に提供しています。1階の「岳」は掛け流しと浴槽内循環を併用し、2階の「空」は、なんと加温のみの掛け流し。しかも、塩素消毒もしないため、香りを含めて、源泉の個性を感じることができます。
お湯は、まるでトマトジュースのような赤褐色。泉質名である「鉄泉」の通り、少し金気(かなけ)を感じる爽やかな香りが、鼻腔(びこう)をくすぐります。こってり濃厚な濁り湯に身を沈めると、ツルツルキシキシとするやさしい肌触り。しばらく漬かっていると、グッと湯が体に染み入るような感覚で、芯までよく温まるのが分かります。湯上りは、ずっと体がポカポカで湯冷め知らずでした。
楽しみにしていた夕食は、フウセンダケ・シイタケ・豚肉などの鍋、キッシュ、ふろふき大根、牛肉のトマトグラタン、マイタケなどの天ぷら、手打ちそば、などが次々に運ばれてきました。山菜やキノコを生かした、和洋折衷のメニューに舌鼓。特に、地元産のそば粉を使用し、ご主人が毎日手打ちするおそばは絶品でした。
冬は雪景色を楽しめる「天狗温泉 浅間山荘」。春、夏は緑濃い山々、秋は紅葉と、四季を通じて違った表情を見ることができます。
冬真っただ中の今、寒くて出かけるのがおっくうになる気持ちはよく分かります。それでも、少し足を延ばせば、そんな気持ちが吹き飛ぶような、冬のすがすがしい景色が待っています。そこに温泉があれば、冷えた体がじっくり温まり、この季節ならではの癒やしを堪能できるのではないでしょうか。
【天狗温泉 浅間山荘】
住所 長野県小諸市甲又4766-2
電話番号 0267-22-0959
【泉質】
単純鉄(II)冷鉱泉[炭酸水素塩型](低張性 弱酸性 冷鉱泉)/泉温8.4度/pH:5.9/湧出状況:自然湧出/湧出量:47.6リットル/加水:なし/加温:あり/循環:なし/消毒:なし ◆掛け流し・掛け流し循環併用
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。