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浅草寺の仲見世・屋根上からのレアショット! 関東大震災も乗り越えた「カナメ一文字葺き」のすごさとは?

国内屈指の観光地・浅草。その中心にある仲見世商店街で、戦後初となる屋根の全面葺(ふ)き替え工事が行われました。関東大震災や東京大空襲を乗り越えてきた仲見世の屋根は、今回の改修でどのように生まれ変わったのでしょうか? 屋根に採用された「カナメ一文字葺き」とは? 貴重な工事の様子とともに、その技術と魅力に迫ります!

日本で最も古い商店街の一つ「浅草寺の仲見世商店街」が屋根の全面葺き替えを完了する

画像提供:株式会社カナメ

浅草寺の仲見世は、長さ約250mにわたって約90店舗が軒を連ねる、日本で最も古い商店街の一つです。江戸時代から続くこの通りは、何度も修復を重ねながら現在の姿を保っています。

画像提供:株式会社カナメ

しかし、長年の風雨にさらされ、屋根が老朽化。一部の店舗では雨漏りも発生していました。そこで、2024年6月1日から2025年3月中旬までの約10カ月間、仲見世の13棟(屋根面積2,138平方メートル)で全面葺き替え工事が行われました。

安全性を考慮しながら3棟ずつ順番に施工が進められ、一部は24時間体制での作業となりました。その結果、仲見世の屋根は美しく安全なものへと生まれ変わったのです。

今回の工事では、普段は見ることのできない屋根の上の景色が明らかになりました。ピカピカに生まれ変わった屋根の上からは、仲見世を行き交う観光客を一望できます。にぎやかな通りを歩くのとは違い、屋根上からの視点では、人々が浅草を楽しんでいる様子がはっきりと見えました。

今回採用された屋根材は、「銅板カナメ一文字葺き」。初めは赤褐色をしていますが、時間の経過とともに黒っぽく変化し、最終的には緑青(ろくしょう)が発生して、見慣れた緑色へと変わっていきます。この経年変化もまた、銅板屋根の魅力の一つです。
浅草寺の仲見世に採用されている「カナメ一文字葺き」とは?

画像提供:株式会社カナメ

今回の仲見世の屋根葺き替え工事を手がけたのは、1941年創業の屋根専門メーカー「株式会社カナメ」。社寺建築の施工に定評があるこの企業が採用したのが、「カナメ一文字葺き」です。

「カナメ一文字葺き」は、直線の美しさと滑らかな曲線をあわせ持つ、社寺専用の屋根材の中でも最軽量。その軽さから耐震性にも優れ、地震の揺れを抑える効果があります。耐久性・安全性・意匠(いしょう)性を兼ね備えた、社寺建築に最適な屋根材です。

また、この「銅板カナメ一文字葺き」は、長野県の高野山真言宗光輪寺(こうりんじ)など、全国の歴史ある社寺にも採用されています。日本各地の重要な文化財を守るため、広く活用されている技術です。

「カナメ一文字葺き」は何がすごい?

「カナメ一文字葺き」の特長は、以下の3つにまとめられます。

耐震性
通常の瓦屋根に比べて約18分の1の軽さ。
建物への負担が減り、地震の揺れを抑えることができる。

防水性
ハゼ(屋根材のつなぎ目)の内部にあえて空間を設けた特殊構造を採用。
台風や強風時でも雨水が逆流しにくく、防水性が高い。

熱膨張への耐性
銅板の膨張・収縮を考慮し、屋根の横移動を防ぐ構造。
これにより歪みやひび割れを防ぎ、美しい状態を長く保てる。

今回の工事で使用された「カナメ一文字葺き」はなんと7,100枚! その耐久性から、銅板の場合、今後100年は持つとされています。

浅草寺のマニアックな見どころ

仲見世の屋根だけでなく、浅草寺のほかの建物にもカナメの技術が生かされています。

2007年 宝蔵門の屋根をチタンに
2010年 本堂の屋根をチタンに
2017年 五重塔の屋根をチタンに

これらの建物には、耐久性と軽量性に優れた「チタン屋根」が採用されています。その軽さは従来の土瓦の約13分の1! また、チタンは塩害に強く割れにくい特性があるため、半永久的に美しい外観を保つことが可能です。

実際、かつて本堂の屋根には2,000tを超える土瓦が使われていましたが、東日本大震災前にチタンへ葺き替えたことで被害を免れました。「もし土瓦のままだったら大惨事になっていたかもしれない。カナメという社名のとおり、境内の“要”です」と浅草寺執務長の守山雄順さんは語ります。

特に本堂の屋根には、3色のチタン屋根を不規則に配置することで、いぶし瓦のような自然な風合いを再現しています。

本堂の屋根には約89,000枚、五重塔には約57,000枚、宝蔵門には約40,000枚ものチタン屋根が使われています。実は、カナメのチタン屋根が開発された後、全国で最初に採用されたのが浅草寺でした。ぜひ、建物ごとに屋根をじっくり観察してみてください。

未来の景観を守るために

浅草寺の仲見世は、江戸時代から続く歴史ある場所ですが、時代とともに少しずつ変化してきました。今回の屋根の葺き替え工事によって、これからも仲見世のにぎわいと安全を支えてくれるでしょう。浅草を訪れた際には、お店だけでなく、新しくなった屋根にもぜひ目を向けてみてくださいね。

浅草仲見世商店街

住所:東京都台東区浅草1-36-3
電話番号:03-3844-3350(仲見世商店街振興組合)
営業時間:店舗により異なる
定休日:店舗により異なる
公式サイト:http://www.asakusa-nakamise.jp/

[photos by Kei]


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